
「ブラックパンサー」シリーズや「クリード」を手がけたライアン・クーグラー監督とマイケル・B・ジョーダンが再びタッグを組んだ意欲作が、この「罪人たち」である。世界的には大ヒットを記録している作品なのだが、黒人が主演の映画であることや、吸血鬼をテーマにしたホラー作品であることから、日本ではヒットしないだろうと言われている。
そんな「罪人たち」ではあるが、事前情報でIMAXフィルムで撮影、上映された映画館があるということと、僕がロンドンに旅行に行って、当初ロンドンのBFI IMAXで映画を見ようかと考えた時に上映していたのがこの映画だったので気になっていて、日本ではフィルムではないもののIMAXレーザーGTでIMAXフィルムと同じ画角で鑑賞できるとわかったので、見に行った次第である。
黒人が主役の映画で、しかも吸血鬼をテーマにした映画だというとどのような展開になるのか、かなり好奇心を持って見ていたが、主人公のスモークとスタックよりは、彼らの従兄弟であるサミーの方が真の主役であるように見える。サミーが親に逆らってブルースを黒人労働者に向けて奏でるのは、ある意味同胞への手向けにもなっていると同時に、悪魔をも呼び込む魔法にもなっていて、サミーをはじめとする黒人ミュージシャンがブルースを奏でることで、吸血鬼を呼び込んでしまった、という流れになっている感じはある。
また、黒人労働者のためにダンスフロアを開設するスモークとスタックの兄弟も、色々悪事を手を染めて成金になってきた設定になっており、彼らの親がろくでなしだったという設定もあるので、単に好感度の高い主人公というわけでもなく、影がある主役である。しかし、この2人に対して嫌悪感を抱くことなく、むしろ感情移入できるのは、キャラクター設定のうまさによる。
映画を彩るのはブルースであり、数々の楽曲が作品を彩っている。そして、悪魔である吸血鬼を呼び寄せるのもこれら音楽である。音楽を魔術的に扱った映画としては珍しいのではないか。
IMAXフィルムとウルトラ・パナビジョン70で撮影されたこの映画は、1.43:1と2.76:1を行き来するが、1.43:1のIMAXフィルムシーンはそんなに多くはない。前半は少しだし、メインで使われるのはクライマックスの吸血鬼との戦闘シーンである。IMAXフィルムの撮影にはクリストファー・ノーラン監督のアドバイスが入っているとのことである。IMAXフィルムを使った映画作りに長けているノーラン監督だから、クーグラー監督にもアドバイスできるのだと思う。ウルトラ・パナビジョン70のシーンがメインではあるが、相当な横長画面なので、IMAXシアターで見ると、映像領域はかなり狭い。
映画はエンドクレジット中におまけシーンとエンドクレジット後におまけシーンがある。おまけシーンと書いたが、本編に関係する重要なシーンなので、クレジットが流れたからといってすぐに席を立たない方がいい。落ち着いて最後の最後まで映画を観るべきである。
作品としては、単なる吸血鬼映画ではなく、人種問題も孕んだ複雑な内容の作品であるので、余韻は強く残ると思う。日本ではウケないタイプの映画だが、池袋のIMAXレーザーGTに行ける機会があるならば、ぜひ見てほしい作品である。