レビューの詳細は、THE LAST EMPEROR(4K UHD Blu-ray UK)/ラストエンペラー/輸入盤DVDで観た映画のレビューを参照のこと。今年の1月末に劇場で映画「ラストエンペラー 劇場公開版 4Kレストア」(KBCシネマ1)を見た時の感想を書いている。その時には、「劇場で見た後なので、イギリス版の4K UHD Blu-rayが届いてもすぐには見ないとは思う」と書いたのだが、先日、この映画に俳優として出演し、また映画音楽を担当して日本人初のアカデミー賞を受賞した坂本龍一が逝去されたので、追悼の意味も含め、改めてホームシアターで「ラストエンペラー」の4K UHD Blu-rayを鑑賞し直した次第である。
イギリス版の4K UHD Blu-rayなのでリージョンコード縛りはないものの、当然日本語字幕も吹替音声もないのだが、意外と簡単な英語のセリフが多かったのと、2ヶ月半前に劇場で見ているせいもあってか、物語はじっくり追うことができた。物語自体は、劇場で見た時の印象とは大きくは変わらず、清の最後の皇帝である愛新覚羅溥儀の不幸な人生が、丹念に描かれているのが特徴である。
坂本龍一追悼の面で見ると、彼が演じていた満州映画の所長である甘粕大尉の存在感はかなり大きいと言わざるを得ない。そんなにセリフは多くはないのだが、溥儀が望んでいた満州国の皇帝の立場が、実は甘粕大尉の傀儡皇帝でしかないという皮肉に、時代の冷酷さを感じざるを得ない。ただ、甘粕大尉が画面に出ているだけでその存在感を意識せずにはおられないキャラだと思う。
映像は4K/DOLBY VISIONで収録されていて、マスターは35mmフィルムをスキャンしているのでネイティヴ4Kでの収録になっている。付属のブックレットによれば、35mmフィルムはSDRなので、ビデオ化に際しカラーグレーディングを行い、DOLBY VISION HDR化を計ったことになる。解像度は高精細だが、フィルムの粒子自体が見えているのは気になるところはある。色彩もHDRなのでブリリアントな色彩を放っているといえよう。
音響はdts-HD MA 2.0chと5.1chの両方を収録しているが、今回はdts-HD MA 2.0chの方で視聴した。2.0chのステレオ音源ではあるが、実際はDOLBY STEREO 3-1サラウンドのミックスなので、AVアンプでデコードすると、dts Neural:Xモードで空間に音が広がるサラウンドが楽しめる。空間の広がり方は視聴位置より前方にほぼ限定されるが、少なくともスピーカーから音が出ているとあからさまに感じさせる音の鳴り方はしていない。オリジナルの音源としてはこちらの方だと思う。
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