アメリカンコミックの「バットマン」で、バットマンの最大の宿敵であるジョーカーの誕生秘話を描いた作品が、この「ジョーカー」である。ベネチア国際映画祭で最高峰の金獅子賞を獲得したことで、この映画の評価が高まったと言え、アメリカでは、10月公開の映画としては、過去最高の興行収入を挙げている。映画は、貧しいながらもコメディアンを目指すアーサーという男が、幾たびかの事件を起こし、次第に悪役であるジョーカーに変貌していく様を描いているのだが、バットマンをよく知らない観客に対しても理解できるように作品ができているので、この映画を見るための前知識はあまりいらないと思う。アーサーと彼を取り囲む人々との交流が、次第にアーサーを追い込んでいくのだが、アーサーが最初から精神を病んでいて、薬を飲んで治療しているのは、ジョーカー誕生の引き金にもなっていて、興味深い。アーサーの住むゴッサム・シティが裕福層と貧困層に分かれて対立しているのは、現代の世情を写しとっているかのようである。アーサーが落ちていく様は、見ていて痛々しいものがあるが、アーサーを演じたホアキン・フェニックスの名演で、彼に感情移入できるようになっているのが、映画の出来を高めている。IMAXでは珍しく2D映像だが、画面サイズがほぼフルスクリーンなので、迫力を感じる。必見の映画の一つであると言える。
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