1950年代に発表され、その内容から物議を醸し出したナボコフの代表作といえるのがこの「ロリータ」。現在問題になっている「ロリータ・コンプレックス」の元ネタとなっている本でもある。ストーリーはハンバートという男の手記という形で進行していく。アメリカでロリータという少女と出会い、恋に落ちたハンバートがその少女の母親と結婚し、ロリータと男女関係を結んでしまうという、最近の事件を見ても時代の先端を行く内容になっている。しかしながらポルノかといわれるとポルノ的内容ではないような気がする。ハンバートという中年男によって人生を狂わされたロリータという少女の悲劇と、逆に少女に恋したために人生を誤ったハンバートの悲劇という側面が強い気がしている。途中は二人の逃避行というロード・ノベルの一面も見せていて、多様な見方ができるようになっている。映画も既に2度作られているが、スタンリー・キューブリック監督版はコメディー色が強く、エイドリアン・ライン版は凡庸であるといえる。長編なので映像化が難しいのではないかと思う。どちらにしても、一読の価値はある作品だと思う。
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