雨宮処凛著「死なないノウハウ」光文社新書

雨宮処凛という存在を知ったのは、「マガジン9」という憲法9条を大切にすることをコンセプトに運営されているサイトで、彼女の連載記事を読み始めたことがきっかけである。そもそも「マガジン9」の存在を知ったのは、昨年の春、映画監督の三上智恵が『戦雲』というドキュメンタリー作品を公開した際に、彼女が記事を連載していたのがこの「マガジン9」だったからだ。その流れで同サイトの記事を読むようになり、そこで雨宮処凛を知るに至った。

彼女の記事には共感できる部分が多かった。そして、自分自身を振り返ると、50代半ばで独身、家庭なし、母が亡くなり父が一人、弟はいるがあまり付き合いがないという状況である。経済的には今のところ問題はないが、今後どのように老後を生き延びていくかは関心事の一つだった。加えて、精神疾患を抱えていることもあり、精神疾患患者の平均寿命や未婚男性の平均寿命について調べると、おおよそ70歳程度らしい。自分がそれより長く生きるのか短くなるのかは神のみぞ知るところだが、一つの目安として70歳を寿命と考えている。

そんな中、どう生きていくべきかを考えていたときに、雨宮処凛の『死なないノウハウ』という本がヒントになりそうな気がしたので、購入して読んでみた。本書は、彼女自身の経験をもとに書き出され、経済的な問題に対する救済策、仕事の確保、親の介護、健康管理、トラブル対策、死に関する情報まで、国の制度を活用する方法が詳細にまとめられている。

読んでいて「親の介護」の章については、「母が亡くなった今となっては、少し手遅れだったな」と感じた部分もあった。しかし、「トラブル」の章では、関係があまり良くない弟との付き合い方について多くのヒントが書かれており、それまで見えていなかった解決策が一気に開けたような感覚を覚えた。

雨宮処凛自身も独身で、猫と暮らしている。だからこそ、「どう生き延びるか」という視点が一貫しており、その分、読者にとって親しみやすい内容になっていると感じた。人生で行き詰まったときでも、この本をよく読み、公的機関に助けを求めれば、何とかなるのではないかと思える。

現在、独身者は急激に増加しており、それに伴い、かつては問題視されなかった事柄が次々と社会問題になっている。独身であるがゆえに慌てふためく場面も多いが、本書を読んで「助けを求める方法はある」と知っているだけで、気持ちがずいぶん楽になるのは事実だ。人生に行き詰まり、誰にも頼れないと感じている人には、ぜひ一読を勧めたい。

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