ネットニュースやSNSなどで騒がれているジャーナリストといえば、望月衣塑子さんが群を抜いていると思う。僕も最初、ジャニーズ性加害の問題で記者会見を開いた時の彼女の追及には唖然とした記憶がある。
しかし、その後のYouTubeのArc Timesでのキャスター出演を見たりするうちに、望月衣塑子さんに対しては割と好意的に見るようになっていった。他のジャーナリストたちが追求を甘くしている中で、一人厳しく当事者を追及する姿勢を評価し始めたのである。
そんな望月衣塑子さんであるが、本業の新聞記者としてではなく、書籍も何冊か出版されているのをたまたま知った。何冊かある書籍の中で、自伝的そうだなと思ったのが、この「新聞記者」である。この本を元に映画も作られている。邦画なので見ることはないと思うが。そんなこともあって、「新聞記者」を買って読んでみた。
予想通り自伝の内容だったのだが、子供の頃の演劇に目覚めた下りと、ジャーナリズムに憧れる下りは、興味深いものがあった。そして、割と正義感の強い人なのだな、と本を読むうちに実感していった。他のジャーナリストたちが記者クラブで安穏としている中、一人突っ走って菅元官房長官に食い下がる件は、ジャーナリズムがなんなのかを改めて知った気がする。
プライベートのことにはあまり触れていないが、それでもプライベートでもいろいろ大変なことがあったというのは言葉の端々から伝わってくる。それでも記者魂を捨てない姿勢には同意するものがある。
Arc Timesは先日降板してしまったのだが、現在も編集長を務めておられる尾形聡彦氏に対する見解が書かれていたり、最終的に名誉毀損で訴えられた伊藤詩織氏の事件に対する追及とか、出版された年が2017年とかなり古いので、今の出来事からすると、複雑な思いに囚われる部分もあるのだが、本人の人となりを知ることができるのは、面白いと言える。
誰にとってもおすすめの本ではないと思う。望月衣塑子さんが生理的に合わない人にはお勧めはできない本ではある。でも、彼女の活動に共感できる人には、読んでもらうとより詳しく彼女のスタンスがわかるのではないかと思う。