レビューの詳細は、TOTAL RECALL(1990)(4K UHD Blu-ray)|トータル・リコール|輸入盤DVDで観た映画のレビューを参照のこと。
この映画は、1990年の冬に公開初日に見た記憶がある。確か、映画の日と重なっていたために当時の観客動員が最高値を越したなんていうニュースが流れたぐらいである。その後、レーザーディスクで買ってみた記憶はあるのだが、DVD、Blu-rayと買わなかった覚えはある。監督がポール・ヴァーホーヴェンなのでアクの強いどぎつい残虐描写が多く、ちょっと距離を置いていた気はする。
ただ、4K UHD Blu-rayが劇場公開30周年でアメリカでリリースされるというニュースを聞いて、購入をしたのだが、なかなか見る気にならずに今日まで放置していた。でも、4K UHD Blu-ray化されて音響がDOLBY ATMOSにリミックスされていたので、見直してみようかなと思ってみた次第である。
映画も話の一部は覚えていたが、結構忘れている部分が多く、冒頭からラストまで楽しんで見ることはできた。映画のベースになったのはフィリップ・K・ディックの短編小説「追憶売ります」なのだが、小説の何が真実なのかわからないというどんでん返しに次ぐどんでん返しの展開はこの映画ではあまり重視されず、基本シュワルツェネッガーが大活躍するアクション大作になっているところは、娯楽作としては及第点を与えられるのではないかなと思う。短編小説のストーリーをもっとフィーチャーした作品になっていたらどうなっていたか、という疑問もなくはないのだが、娯楽作としてのこの映画は面白い。
また、レトロフューチャー的な未来の世界観も、今見ると妙に古めかしいのだが、そこがこの映画の味になっているところがあり、興味深い点であると思う。ロボットタクシーとか、シュワルツェネッガーの鼻から出てくる発信機とか、シュワルツェネッガーが太った女性に化けていたのがバレるシーンとか、インパクトがかなり強いシーンが多く、印象に残る点である。
シュワルツェネッガーの妻を演じたシャロン・ストーンの存在感の強さもこの映画で特筆すべき点だと思う。彼女はこの映画で認められてポール・ヴァーホーヴェン監督の次回作「氷の微笑」で主役に抜擢されるのだが、アクションスターとしての地位を確立していたシュワルツェネッガーをしばく姿は、結構惚れ惚れとする。
映像は4K/DOLBY VISIONで収録されていて、2020年に4KのDIを作っていることから、ネイティブ4Kでの収録ではあるが、マスターのフイルムの状態ゆえか、結構グレインノイズが多く、映像自体の解像感はあまり高くないなと感じるところはある。DOLBY VISIONによる色彩管理も1990年の映画だなと感じるところが多く、輝度が格段高いわけではなく、黒の締まりも今ひとつで、色彩に対しての魅力は少々薄い。
音響はDOLBY ATMOSでリミックスされていて、これが3-1のサラウンドをよくぞここまで三次元サラウンドにミックスし直したな、と実感するぐらいに臨場感がある。ダイナミックレンジ自体はそんなに広くないと思うのだが、オブジェクトの配置が視聴者を取り囲むようになっているために、没入感が高い。
久しぶりに再見したこの映画だが、意外と面白く、1990年当時の興奮が蘇った印象である。日本では4K UHD Blueはリリースされていないと思うので、英語字幕に抵抗なければ輸入盤を購入して見るのがいいかと思う。
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