PERFECT BLUE/パーフェクトブルー(中洲大洋劇場)

若くしてこの世を去った今敏監督の名を一躍有名にしたのが、この「PERFECT BLUE/パーフェクトブルー」である。1998年公開の映画がこの度4Kリマスターされての劇場公開なのだが、普段邦画やアニメを見ない僕がなぜこの映画を見に来たかというと、二つ理由がある。

一つは1998年当時劇場ではこのアニメは見ていないのであるが、レーザーディスクでバーゲンセールか何かで買って見た記憶があり、結構面白かった印象が残っている。すでにレーザーディスクは処分してしまっているので手元になく、その後のディスクメディアでは買い替えていないので、久しぶりに見てみたくなった、というのがある。

もう一つは中洲大洋劇場という映画館にある。ニュースで報道されているが、建物の老朽化を理由に2024年3月をもって映画館を閉館するというのである。この映画館には過去何回か来ていて、その昭和の香りのするレトロな建物にインパクトを受けているのであるが、普段は最新機材を導入しているシネコンに行くためにこの中洲大洋劇場に来ることはなかった。閉館を半年後に控えて一度は再訪したいという気持ちはあり、たまたま「PERFECT BLUE/パーフェクトブルー」の上映があるのを知ったので、出かけてみようかという気持ちになったというのがある。

劇場に来て驚いたのはその客層である。25年前のアニメなのに、見に来ている観客の大半が若い20-30代の世代なのである。ハリウッド映画の大作「タイタニック」を見に行った時も若い世代の観客が多くて驚いた記憶はあるが、「PREFECT BLUE/パーフェクトブルー」のような大作でもなんでもない25年前のアニメにこんなに若い世代の観客が集まることに驚いている。どこで話題になったのだろうか。

映画は4Kリマスターとは銘打ってはいるが、残念ながら中州大洋劇場の上映形式は2Kである。ただ、元がセル画のアニメでそんなに解像度を気にする必要もないので、物語が進むにつれて、4Kか2Kかという違いを気にしては見ていない。

内容的には忘れていた部分もあるが、アイドルグループであったCHAMの一人未麻が女優に転身するものの、レイプの演技やヌード写真の撮影等のハードな状況に置かれる中、もう一人のアイドルの自分の影に惑わされ、次第に自分を見失っていく、という展開にはある種今の芸能界を(昔もそうだが)揶揄するかのような雰囲気すら感じさせる。そして、物語は途中から未麻の周囲で起こる連続殺人事件へと走っていくのであるが、最初から未麻に付きまとうアルバイトの警備員の男とか怪しいなと思いつつ、途中から「そういえば真犯人はあの人だったっけ」と思い出し、その過程をじっくり見返すことで、アニメにしてはかなりサイコなサスペンス映画として仕上がっていて、後半に行くにつれ、その面白さが加速していると思う。

1998年の風景としてのアイドルオタクたちの生態も結構リアルだし、オタクならではの気持ち悪さがよく出ていてリアルに感じられる部分がある。また、未麻が買ったパソコンがAppleのMacというのも今の時代からするとなんか妙に制作者のこだわりがあるなと思ったりもした。インターネットブラウザがNetscapeだし。

物語全体が未麻の妄想の部分と現実とが交差して、次第にどこからが現実でどこからが妄想なのかが観客にもわからなくなるところが、このアニメの凄いところである。ラストのオチは、これでいいのかと思うところもある。ただ、25年前にレーザーディスクを買って見てすごいと思ったアニメを改めて25年後に見返して「やはりすごい」と思ったので、見に来て良かったと思っている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました