映画「オッペンハイマー」(IMAX 2D/ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13)

アメリカ公開から遅れること8ヶ月、一時は日本公開が危ぶまれていた「オッペンハイマー」だが、昨日、2024年3月29日からようやく日本でも劇場公開された。本当は初日に劇場で見たかったのだが、仕事の関係で年休を取ることはできず、夜の上映は終演時間の関係で家に帰る手段もないことから、2日目の今日、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13のIMAXレーザー4Kで鑑賞した。

日本公開が不明なままだった昨年12月に輸入盤4K UHD Blu-rayで「オッペンハイマー」は見ている。そればかりか、ハヤカワ文庫から刊行された原案本の「オッペンハイマー」巻も読破しての鑑賞になった。だから、ある意味最初からネタバレ状態で劇場上映を鑑賞したのだが、それでも、IMAXシアターでの鑑賞を前提としたアスペクト比や、圧巻の音響、そして輸入盤4K UHD Blu-rayでの鑑賞では分からず、原案本を読んだことで知った事実を物語としてあらためて日本語字幕付きで鑑賞すると、物語の完成度の高さに唸らされたし、主人公ロバート・オッペンハイマーのまさに栄光と没落がより鮮明に描き出されていて、オッペンハイマーになったかのような感覚に囚われてしまい、完全に感情移入してしまった。

物語の筋としての反核というテーマは輸入盤4K UHD Blu-rayで鑑賞した時に感じたことだが、その感じは日本語字幕付きの劇場鑑賞でも間違ってはいなかった。たしかに唯一の被爆国である日本の立場からすれば、広島や長崎の惨状が描かれていないことに対しての不満が出てくるのもわからないでもないが、物語を通じてオッペンハイマーが苦悩する姿や、登場人物たちが核のある世界に対する危機感を訴えているシーンは随所にあるので、映画をちゃんと見ている人には、反核の映画だと認識するはずである。

今回、日本語字幕付きで映画を鑑賞して、改めて認識し直したのは、ややこしい時系列の巧みな演出である。輸入盤4K UHD Blu-rayで鑑賞した時にはぼんやりとしかわからなかった、オッペンハイマーがソ連のスパイと疑惑を持たれて原子力委員会の聴聞会を受けているシーンと、そのシーンからオッペンハイマーが原爆を開発するまでの話、オッペンハイマーの政敵であるストローズが商務長官に任命されるかどうかの聴聞会のシーン、そして、オッペンハイマーの頭の中で描かれる原子核の分裂シーンと、認識しただけでも4つの時系列が交互に描かれているので、原案本で事前予習していないと、かなりわかりにくいのではないかと感じた。逆に原案本を読み込んで、予習していると、その時系列の編集の巧みさに唸らされるところがあると思う。

そして、この時系列で思ったのは、オッペンハイマーがソ連のスパイと疑われて聴聞会にかけられるシーンと、ストローズが商務長官に任命されるかどうかの聴聞会のシーンは対になっていると感じた。どちらの聴聞会も、被告が自分のキャリアを潰される話であり、オッペンハイマーはソ連のスパイとは認定されなかったものの、アメリカの機密情報へのアクセス権を取り消される事態になり、ストローズはオッペンハイマーの聴聞会がストローズの個人的恨みから出たものとして、ケネディらから反発を受けて商務長官になれなかったというのは、映画としてはオッペンハイマーも罰を受け、ストローズ自身もそれ相応の罰を受けたという意図が見え隠れする。輸入盤4K UHD Blu-rayで見た時には理解できなかった聴聞会のくだりは、実は映画としてはものすごいクライマックスなのだと、改めて思っている。

映画はIMAXフィルムで撮影されているので、キャナルシティのIMAXレーザー4Kでも役不足である。この映画の凄さを体感するには、池袋のグランドシネマサンシャインか、吹田の109シネマス エキスポシティのIMAXレーザーGT以外にはあり得ないと思っている。それでも、IMAXレーザー4Kでの上映もかなりの没入感を観客に与えているし、池袋や吹田まで遠征するための費用や時間を考えると、IMAXレーザー4Kによる映画鑑賞はベターだと思っている。また、サラウンドも圧倒的な低音の唸りと観客を取り囲む音源とで、ホームシアターの興奮を銀河の彼方に飛ばしてしまうほどの魅力を備えている。

アカデミー賞7部門を制覇した「オッペンハイマー」だが、まずは劇場、それもできればIMAXシアターで体感して欲しい。そして、劇場で見ても分からなければ、原案本を読んで歴史的背景を学んでほしいと思うところである。

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