福井晴敏「重力の井戸の底で」機動戦士ガンダムUC 6

長編大河小説の第6巻は物語を地球に移動しての展開を見せる。前半は砂漠に不時着したネオジオンの輸送船ガランシェールからの救援を求めてのジンネマン艦長とバナージの交流が描かれる。今回のガンダム物で珍しいのは、主人公バナージが状況に応じて連邦側についたり、ネオジオン側についたりするところではないだろうか。そうしてそのついた側の大人たちと交流を重ねることで、日常生活から一変してしまった自分の有り様に次第に折り合いをつけていくさまが描かれるのが物語のポイントではないかと思う。また、バナージに触れた大人たちも生き残るにしろ、戦死するにしろ何らかの影響を受けて自分の殻にこもっていた世界を開放していくところに醍醐味があると思う。中盤から後半にかけてはアラブのネオジオン協力者マハディの暴走が描かれる。宇宙世紀になって争いはもっぱら地球に住人対スペースコロニーに住人という構図が一般的だったが、実は地球に済んでいる人の中でも宗教的な対立が存在していたことが明かされ、地球にする人たちのまだまだ変われない世界観が連邦の本拠地ダカールでの激戦と同時に描かれる。この本からガンダムではお馴染みのブライト艦長が登場し、作品の世界観を統一させるのに一役買っている。ただ、ミネバの活躍が殆ど無く、ようやくリディが後半活躍する以外は新キャラの活躍で大半が占めてしまうところは、風呂敷広げすぎと思うところもある。

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