ブラジルにたった一人で訪れた北村という中年男は、日本語のしゃべれるガイドと出会い、田舎の岬の突端まで向かおうとする。深刻そうな顔つきをした彼の意図はいったいなんなのか。一方北村に去られた息子のハルは、父の部屋からビートにまつわる資料を見つけ、父の足跡をたどろうとニューヨークに向かう。そこでハーフの女性・デイジーと出会ったハルは、ビートにまつわる遺跡に訪問しつつ、父が何を思っていたのか探ろうとしていた。北村と、ハル、そしてデイジーの行きつく先はどこなのか、物語は核心に迫っていく。
堤幸彦監督が佐野元春のアルバム「COYOTE」にインスパイアされて制作したロードムービー。物語の各所で佐野元春の「COYOTE」収録曲が使われているのが印象的なドラマである。物語としては、父・北村の物語は魂の解放の物語、息子・ハルはビートの軌跡をたどる物語という感じで別れている。双方の物語が交互に描かれ、次第に混ざり合っていく様は圧巻である。ジャンプカットも随所に使われ、イメージが強く残るようになっている。物語終盤まで深刻そうな顔をしていた北村が最後で笑顔になり、封印していたカメラを使う様は、ビート流によれば「路上に戻った」ということなのだろうか。また、息子のほうはそんな父を理解しようとしていくようで、それをデイジーが手助けするという展開が心地よい。こちらも若者同士の「路上」ということだろうか。ビートの理解をするにはいいドラマだったと思う。
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