レビューの詳細は、EVERYTHING EVERYWHERE ALL AT ONCE(4K UHD Blu-ray)/輸入盤DVDで観た映画のレビューを参照のこと。この映画は2022年の3月末あたりから劇場でヒットしているという話を口コミで見かけていて、アメリカでは最初限定公開だったものが拡大公開になり、ボックスオフィスのチャートでトップテン圏内をずっと維持し、大人気になっている、という情報を仕入れてから、4K UHD Blu-rayのリリースを心待ちにしていたものである。独立系映画会社A24が制作しているためか、今の所日本での上映予定もなく、輸入盤の4K UHD Blu-rayでしか日本でこの映画を鑑賞する手段はないのだが、鑑賞しての感想は、「とても面白い」、「今年見た映画のトップ3に入る」ぐらいの出来の良さで、輸入盤4K UHD Blu-rayを買って鑑賞して良かった作品である。
物語は、大ヒットスーパーヒーロー映画シリーズ、マーベル・シネマティック・ユニバースでも取り扱われている「マルチバース」を設定に取り入れた作品ではあるが、こちらの映画の方がマーベルのマルチバース展開よりよほど出来がいいのでは、と思わせる内容になっている。
主演を務めるのは、アジアを代表するカンフースター、ミシェル・ヨーであるために、アクションシーンにおけるカンフーの取り扱いも万全で、カンフーアクションが冴える演出になっている。また、主役クラスの俳優がアジア人で占められているために、アジア系アメリカ人をターゲットにした映画であると同時に、映画の多くで中国語が使われていることから、中国市場での公開を視野に入れている映画と言ってもよさそうである。
映像はマルチアスペクト比になっていて、メインは1.85:1のビスタサイズでの描写になっているのだが、しばしば2.39:1のシネマスコープになったり、マルチバースの世界の表現で1.33:1や2.00:1のサイズになったりと、結構目まぐるしく変わる。自宅でIMAX ENHANCEDを体感しているかのような映像表現になっているが、この映画自体はIMAXに最適化されているわけでもないので、あくまでマルチバースの世界観表現の一環としてマルチアスペクト比が使われていると見た方がいいだろう。
その他の映像表現もかなり凝っており、映画自体のフォーマットを壊しているところが面白いと感じるところである。特に主人公が石になって会話を字幕のみで表現するという展開には、唖然とした。その他にも現実の世界を映画の中の世界にして主人公が映画館でそれを見ているというシーンもあり、その凝り様は興味が尽きない。
映像は4K/DOLBY VISIONでの収録である。マスターデータは4Kなのでネイティヴ4Kではあるが、目が覚めるほどの高精細というわけでもない。また、DOLBY VISIONによるHDR効果も輝度が眩しいとか、黒が沈んでいる、とかなくて、物語に没入させるための色彩の再現に努めているので、派手ではないと思う。
音響はDOLBY ATMOSで収録されているが、あまりに物語が面白かったため、音響の効果を確認していないぐらいであり、DOLBY ATMOSの効果は十分にあるとは思いたい。
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