映画「ラストエンペラー 劇場公開版 4Kレストア」(KBCシネマ1)

福岡に暮らして間も無く12年が経とうとしているが、福岡で映画を見るのは、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13のIMAXシアターか、T・ジョイ 博多ぐらいで、実は天神にあるミニシアターの一つであるKBCシネマに行ったことがなかった。IMAXやDOLBY CINEMAのようなラージスクリーン・フォーマットで映画を観ることを信条にして来たからだが、今年に入って、「戦場のメリークリスマス 4K修復版」が、KBCシネマで2月3日から上映される、と聞いて、調べているうちに「ラストエンペラー 劇場公開版 4Kレストア」も1月27日から上映されることを知り、4Kレストア版がどのような画質を提供するのか気になって、初めてKBCシネマに足を向けることにした。

「ラストエンペラー」は僕が高校生の頃、まだ神奈川に住んでいた時に、当時通っていた英会話学校の学校長から映画館のチケットをもらって、新宿の歌舞伎町にある映画館に観に行った覚えがある。学校長はどうも映画のチケットを英会話学校に通っていた女子生徒にはプレゼントしたくなかったようである。映画館が歌舞伎町にあったので、女子生徒が行くのには治安の面で不向きと考えたようで、男性である僕にチケットをプレゼントしてくれたので、歌舞伎町まで神奈川から2時間近くかけて観に行った思い出がある。その印象が強く残っていて、記憶に残る作品にはなっていた。

ただ、ホームシアターでビデオを買ったかというと、輸入盤DVDで長尺版を買って観たっきりで観てから20年ぐらい観ていない期間が存在する。アメリカでは2009年にCRITERION COLLECTION Blu-rayがリリースされたが、気にはなっていたものの購入予定はなく、買わなかった。2023年の今年、2月にはイギリスで4K UHD Blu-rayがリリースされる予定なので、購入しようとイギリスのショップに注文は入れてある。

というわけで、20年ぶりぐらいにこの「ラストエンペラー」を再見したわけだが、今見ると、中国最後の皇帝、愛新覚羅 溥儀の激動の人生が、彼が望んだものではなく、周りに流されて人生を送らざるを得なかった、という或る意味悲劇であり、それをジョン・ローンが見事な演技で溥儀の悲劇を表しているように思える。満州出身の溥儀は、望むも望まないにもかかわらず中国最後の皇帝となり、紫禁城の中で外の時代の移り変わりを知らずに成長し、イギリスの家庭教師に教えを乞うて知識を蓄えた時にはすでに激動の時代に入り、中国も世界も変わり、溥儀の心構えが全く役に立たなかった、という点で正に傀儡皇帝であるとしか言いようがない。

そして、物語自体は何が正義なのかすらよくわからないところがある。時代があまりに早く移ろい、溥儀を取り巻く人々も次々に変わって色々なことを溥儀に吹き込み、溥儀もそれを信じてしまうところに、彼の主体性のなさすら感じさせる。物語は戦争犯罪人として服役する溥儀の告白と、彼の過去の人生を交互に描いていくが、それが溥儀の人生の儚さを端的に表していると言える。

劇場公開版を4Kでレストアした本作だが、フィルムの傷や汚れがなくなり、フィルムグレインもごくわずかで、丁寧なレストアであると言える。良質なフィルムを見ている感覚に陥る。音響はDOLBY STEREOをデジタルにミックスし直したもので、映画に没入させる音響効果にはなっている。ただ、背後への音の回り込みはほぼない。元々が3-1サラウンドなので、背後への強調音響はないものと思う。

1987年のアカデミー賞で作品賞・監督賞を含む9部門を制した名作であるこの「ラストエンペラー」だが、改めて劇場で見て、164分という長尺の長さにも関わらず、素晴らしい出来の映画だなと、実感した次第である。イギリス版の4K UHD Blu-rayが届いてもすぐには観ないとは思うが、いずれはホームシアターででも見返して見たい作品である。

福岡に暮らして12年経過して、初めて行ったKBCシネマ外観

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