昨日の朝日新聞の記事で、「時代が変わったな」と思ったのが、人材サービスのエン・ジャパンが調査した結果だった。「今後、転勤辞令が出た場合、退職を検討するきっかけになりますか」という問いに対して、全世代で半数以上が「なる」「ややなる」と回答したというのである。
過去に実際に転勤をした人は、全体の20%を占めているそうだが、その際にも「転勤をきっかけに退職を考えた」のは、全体の44%を占めていたそうである。
アンケートの結果では、年齢が若い人ほど転勤を拒絶する傾向が強いという結果も出ている。売り手市場の中、住まいを変えたくないという意思が表れていると思う。
学生の僕は、2011年から13年間も転勤により神奈川から福岡に住まいを移していた。僕自身は福岡への転勤は望まなかったが、精神疾患を抱えているにもかかわらず、所属上司の対応はおざなりで、福岡に転勤することが前提で話を進められてしまった。
当時はまだ買い手市場だったこともあるし、テレワークなども考えられない時代だったし、僕自身の会社での契約が転勤前提の職種だったこともあったので、仕方ない部分はあった。ただ、会社側は地域限定社員という転勤がない制度も設けていて、そちらで契約すると転勤がなくなるはずだったが、実際は所属する職場の仕事がなくなってしまい、「雇用を守る」という名目の元、地方に転勤させられた人を何人も見ているから、転勤なしの地域限定社員という制度が実際は機能していなかったことも知っている。
福岡ではそれなりに一人暮らしを楽しんではいたが、神奈川で生活することへの欲求は燻り続けていた。昨年、認知症になった母の介護という名目で神奈川に戻ってこられたのは、ラッキーだったと思う。2019年に職場が変わり、別会社の社員として勤務した関係で、今の会社の勤務制度が前の会社の勤務制度とかなり異なっているのも、神奈川に戻ってこられた要因の一つである。今の会社だと従業員の住みたい地域には配慮すると言っているし、実際、テレワークを多用しているので、会社の事務所がある東京や福岡に住まなくても仕事はできる。僕も品川の事務所に出社はできるが、テレワークで済ませている。
転勤制度は、年功序列の終身雇用制度が機能していた時代の勤務形態だと思っている。転勤をすることで幅広い知識を得るという目的があったと思うが、僕に関してはそれはなかったように思う。唯一、住まいの家賃が社宅だったので格安ですみ、貯金ができたぐらいだろう。神奈川に戻ってきた今は、もうどこにも転勤したくない、というのが本音である。
企業も売り手市場の中、雇用を確保するには転勤がないことを売りにしなければ社員を確保できないので、こういう風潮は続くと思う。