ジャック・ケルアック「オン・ザ・ロード」

作家で服役軍人のサル・パラダイスはプレイボーイで、盗みの常習犯であるディーン・モリアーティと知り合い、彼に魅了される。彼とともにサルは、アメリカ大陸を縦横無尽に放浪の旅に出ることになる。ニューヨークからサンフランシスコへ、デンヴァーからメキシコ・シティへ。サルは放浪の旅の中、さまざまな出来事に遭遇する。

1950年代の一大ムーブメントを巻き起こしたジャック・ケルアックの代表作「On The Road」の新訳版が本作「オン・ザ・ロード」。旧版は「路上」というタイトルで発売されていた作品である。ビートとは、「打ちひしがれた」という意味が元々の本意ではあるが、ジャズの「ビート」とか、肯定的な意味合いも含まれている。この本の中では、型破りなヒーロー、ディーン・モリアーティとサル・パラダイスの友好関係や、サルがアメリカ各地で体験する旅の模様が描かれている。この本の登場によって、1950年代の幸福な典型的な家庭主義の否定と、1960年代に移行していくことになるヒッピームーブメントの序章となるものである。今読むとさすがに時代を感じさせるものがあると思うし、典型的な1950年代のアメリカの家庭主義自体が無くなってしまったので、ビート・ジェネレーションの意味合いは薄れてしまっているが、それでもこの本がのちのロックンロールや、文芸界に与えた影響は大きい。旧版である「路上」も実は一度読んでいるが、今回の新訳版「オン・ザ・ロード」は注釈がところどころあり、また、流れるような文体を意識して邦訳しているのでとても読みやすく、音楽を聴いているような感じを受ける。ロックンロールの源流を知りたければ、一読をお勧めしたい作品である。

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