米澤穂信著「氷菓」角川文庫

ジャンルとしては青春ミステリーの部類に入るのではないかと思う、米澤穂信の初期の作品がこの「氷菓」。何事にも積極的に関わろうとしない高校生、折木奉太郎が姉の有無を言わさぬ命令により、廃部寸前の古典部に入部することから物語は始まる。この古典部には名家のお嬢さんである千反田える、漫研の古い付き合いである伊原、友人である里志が入部する。そして日常で起こる謎に対して奉太郎が何故か省エネスタイルを放棄して解決策を出していくという展開である。その謎は最終的には古典部の文化祭への出品物である文集「氷菓」と、千反田の叔父である関谷に過去話をされ、怯えた記憶しかない千反田のその謎に集約していく。この作者は「ボトルネック」でもそうだが、主人公が虚無的な感じのするところが持ち味である。その虚無的な主人公がいかに周囲の期待に応えていくか、そこがポイントであると思う。ミステリーではあるが、学園ドラマでもあるので、青春物ととらえるのがよく、元々は若者向けのジャンルで発刊されている。物語としては読みやすいし、キャラも立っていると思う。主人公の心境の変化が大きなポイントである。

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