下川裕治著「週末シンガポール・マレーシアでちょっと南国気分」朝日文庫

旅行作家の下川裕治による週末アジアの紀行物の最新号がこの「週末シンガポール・マレーシアでちょっと南国気分」である。ただ、他の「週末」シリーズと本作では異なる記述をしている部分がある。それは、この本が2つの国を対象にしていることと、旅行の話というよりはこの2つの国の成立経緯という歴史に触れられている部分が多いことである。僕も本作で初めて知ったのであるが、シンガポールはマレーシアが追放される形で国が成立しているので、その説明なくして、これらの国の紹介が成り立たない、ということなのである。なので、旅の醍醐味みたいな楽しみは、本書では少ない。著者もその辺は理解してはいるが、どうしてもこれら2つの国の成り立ちを説明しなければ、先に進めないということなのだろうと思う。そういう意味では、異色の存在ではある本書ではあるが、シンガポールとマレーシアに関心のある人には、役に立っていると思う。

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