原口泉著「日本人として知っておきたい琉球・沖縄史」PHP新書

鹿児島生まれの著者が、「沖縄を見れば日本が見える」というスローガンの元、沖縄の歴史を事細かく解説した新書が、この「日本人として知っておきたい琉球・沖縄史」である。琉球王国の時代から、薩摩藩の侵攻、支配下にあった時代、沖縄県への編入、太平洋戦争での唯一の地上戦、戦後のアメリカ統治下の時代、そして日本復帰までを詳細に解説した本であり、これを読めば、琉球・沖縄の歴史がよくわかるようになっている。のだが、読んでいて登場する人物の読み方が難しいので、どの人物がどう行動したことでどう大勢に影響したかが、分かりづらい。特に本の大半を占めるのが薩摩藩の侵攻と支配下の時代のことを詳細に描いているが、ここの時代背景が読んでいても頭の中に入ってこないので、理解し難いのである。少なくとも、薩摩藩の支配下にあった中でも、中国・清への交流の関係上、表向きは独立した国家として琉球は存在していた、という話はわかり、そこの部分は少し認識を改める必要があるなとは思った。個人的には学生時代に習う日本史と同じく、近代史が分量が少なく、そこの部分に物足りなさを感じるところが大きい。特に太平洋戦争末期の地上戦の部分や、その後のアメリカ統治下の歴史の部分は、もっと分量があってもいいし、あるべきだと思っている。藤井誠二が「沖縄アンダーグラウンド」でも指摘したように、闇の部分はまだまだあるはずだからである。そういう意味では、まあ好奇心はそこそこ満たされる本ではあるものの、「日本人が知っておきたい琉球・沖縄史」として成り立っているかというと、そこまで成立していないというのが実感である。沖縄を知るにはもっと別の書籍を読んだ方がいいのではないかと思うところがあり、この本を読んで得た知識が役に立つかというと、現実問題役には立たないと言えるのではないかと思う。著者には悪いが。

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