こうの史代著「夕凪の街 桜の国」双葉社

「この世界の片隅に」で大きな評価を得ているこうの史代が、「この世界の片隅に」の前に広島の原爆について真正面から描いた作品が、「夕凪の街 桜の国」である。物語は「夕凪の街」と「桜の国」の2つのパートに分かれていて、「夕凪の街」は昭和30年の広島を舞台に、原爆に被爆した女性、皆実の生き残ってしまったが故の罪悪感と、その後の彼女の運命を描いたエピソード、「桜の国」は七波という女性の少女時代の人生と、成人した時の父の不審な行動を追いかける話になっている。一見関係ないような話ではあるが、この2つのエピソードは、ある点で繋がっており、七波がその真相を知ることで、「桜の国」は「夕凪の街」と関係性を持つものになっている。「この世界の片隅に」は戦争中でも普通の生活を送るすずを描いていたが、こちらの「夕凪の街 桜の国」はより戦争、特に原爆に対して、いろいろ考えさせられる重い展開になっている。「夕凪の街 桜の国」で作品に批判をされたことをきっかけに、「この世界の片隅に」は生まれたというが、「夕凪の街 桜の国」は原爆に対して、一種の影響を感じさせるものになっていると思う。作品自体はページ数も少なく、短い話ではあるが、いろいろ考えさせられる話ではある。

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