映画「劇場が終わるとき」(シネマ・ジャック&ベティ/SCREENジャック)

「劇場が終わるとき」の完成と上映の情報をネットで聞いたのはいつだったか、思い出せない。しかし、2023年に解体された沖縄最古の映画館、首里劇場を描いた映画ということで、一度は見たいとは思っていた。

僕は、2023年10月に当時住んでいた福岡から遠征をして、「首里劇場 最後の内覧会」を沖縄の首里まで見に行っている。そうした関係もあり、首里劇場に関わる映画などは気にしていたし、見たいとは思っていた。

2025年5月に渋谷で「劇場が終わるとき」は上映されたのだが、上映時間の関係と、僕自身の体調の関係から、渋谷に行くのは難しかった。その時は見に行けなかったのであるが、7月26日から横浜・黄金町の「シネマ・ジャック&ベティ」で1週間限定公開がされ、27日の上映終了後には出演したほたるさんと牧瀬茜さんの舞台挨拶があるというので、時間の都合をつけて、シネマ・ジャック&ベティに駆けつけた次第である。

神奈川に住んでいた頃から、シネマ・ジャック&ベティに来たことはなく、福岡暮らしが長かったこともあり、この映画館には縁遠かった。今回が初訪問になったのだが、まさにミニシアターとでもいうべき雰囲気を漂わせていて、味があると思った。

映画は、写真家の石川真生さんが休館している首里劇場を写真撮影するところと、それを追いかける監督の真喜屋力さんの優しい眼差しが作品に溢れている。首里劇場が生命を持っている生命体であるかのように描写されているのが、印象深い。

映画の中で記憶に残るのは、首里劇場から見た外の景色や、外の環境音である。猫の描写、往来する車、蝉の声、雨の音などが意図的に入ることで、首里劇場とはなんだったのかが浮かび上がるようになっている。

一方で、三代目館長であった金城政則氏の人生が甥から語られることで、金城政則氏がなぜ、首里劇場にこだわったのかが垣間見える。二代目館長だった金城政則氏のお父さんの時には、金城家全員で劇場運営をしていたのであるが、金城政則氏が三代目館長になった時から、一人での首里劇場運営にこだわったという話は、首里劇場の取り壊しにもつながる話である。

登場人物は多岐に渡るが、圧巻は牧瀬茜さんのダンスシーンである。全裸の状態で、誰もいない首里劇場でダンスをする姿、そして、それを被写体として写真に撮る石川真生さんの姿は、休館して死を待つだけの首里劇場に再び生をもたらしている。

首里劇場という沖縄最古の劇場の存在は決して終わりではなく、関係者の心に永遠に残り続けるという意味合いを持っている。それは、この映画を撮った真喜屋力さんの首里劇場にかける想いとも重なっている。

映画上映後は、ほたるさんと牧瀬茜さんの舞台挨拶があり、興味深い話を聞けたので、この映画を見に来て良かったと思っている。挨拶の後には写真撮影タイムもあり、ほたるさんと牧瀬茜さんと撮影することができし、パンフレットも購入したのでお二人のサインもいただけたのは嬉しいことである。

このシネマ・ジャック&ベティでの上映の後、首都圏での上映は予定がないそうなので、この作品を見られる可能性は少なくなっているのだが、映画好きならば首里劇場という独特の雰囲気を漂わせた映画館の最後を見届けることができるこの作品を見てもらいたいなと思う。

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