
1982年に第1作が公開された「トロン」シリーズの3作目になるのが、「トロン:アレス」である。第1作目の「トロン」から一貫してコンピューター内のプログラムを実像化してSFアクション映画として成立してきたが、今回はエンコム社のライバルであるディリンジャー社がプログラムを現実化する策をとり、それで世界を支配しようと目論むという捻った展開になっている。
「トロン」シリーズは基本ベースでの共通点はあるものの、ストーリーとしてのつながりは相当薄い。だから、シリーズ1作目の「トロン」は見ておいた方がいいかもしれないが、2作目の「トロン:レガシー」まで見る必要はないように思う。「トロン」もフリンというキャラクターの存在だけ押さえておけばいいので、あまり深刻になる必要もない。
今回の話は、セキュリティプログラムであるディリンジャーの作ったアレスが、ディリンジャーを裏切ってエンコム社のCEOであるイヴに協力する話であるが、テーマとしては傑作SFの「ターミネーター2」と共通する話だなと感じた。どちらもコンピューターのロジックから逸脱して、人間になることを求める話だし、コンピューターによる人類への脅威という点では同じ話である。
ただ、2025年の映画なので、CGの演出は桁違いにクオリティが高い。ビジュアル的な面だけでもこの映画を見る価値はあると思う。面白いのはフリンの作ったグリッドにアレスが行くと、昔懐かしい1980年代っぽいCGに意図的に描写されるところである。この辺は「トロン」を見ていると感慨に耽るかもしれない。
映画が今風だなと感じたのは、エンコム社のCEOであるイヴと死んだ妹のテスが韓国系アメリカ人であるところである。それもあまり不美人ではない普通のアジア人女性を起用しているところに、時代を感じてしまう。イヴもかなり活躍するし、意図的な配役なのだろうなと思う。
本当は、アメリカで発売済みの4K UHD Blu-rayで「トロン」と「トロン:レガシー」を再鑑賞してから「トロン:アレス」を鑑賞した方がより楽しめたと思うが、現時点で入手できていないので、残念ながら予習はできていない。Disney+では配信しているのは知っているが。
映像はIMAXカメラで撮影されているので、1.90:1のアスペクト比で上映されるシーンが多い。IMAXレーザーGTだと上下に黒帯が出るが、スクリーン自体が大きいので没入感は高い。クリアな映像が、魅力的である。
音響も12chサラウンドであるが、オブジェクト的に音が移動するので、音響効果だけでも楽しめる。ナイン・インチ・ネイルズのサウンドトラックは映画の雰囲気作りに貢献している。
思ったほど客が入っていない「トロン:アレス」ではあるが、見ればそれなりの満足感を与える映画になっているのではないかと思う。ビデオ化されたらホームシアターで再見したい。