高樹のぶ子著「マイマイ新子」ちくま文庫

映画「この世界の片隅に」の影響から、監督の片渕須直が製作した他の作品も見たくなり、鑑賞したのが「マイマイ新子と千年の魔法」である。その原作小説が高樹のぶ子女史の自伝的小説「マイマイ新子」である。映画と比較すると、映画が何を取捨選択したかがよくわかる仕掛けになっている。映画で重要な位置を占める貴伊子が小説ではあまり主要な位置を占めず、その他大勢の一人になっているところや、主人公は新子なのは変わりないが、もっと他のキャラと絡んでいく様が、映画と小説の文法の違いを浮かび上がらせている。ただ、映画は映画でいい出来の作品だったが、小説も昭和の古き良き時代を感じさせる内容になっていて、読みやすく、懐かしさを感じさせる出来になっている。今の時代では味わえない子供時代の面白さみたいなものが、全編に漂っている。小説自身は2004年に単行本が出て、2009年に新潮文庫から文庫本が出た後、2017年にこのちくま文庫版がリリースされている。この文庫では解説を片渕須直監督が描いているところと、挿絵を片渕須直監督のサポートをしている浦谷千恵嬢が描いているところが目玉だろうか。今の情報化時代に疲れたしまった人には、オススメしたい小説である。

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