下川裕治著「格安エアラインで世界一周」新潮文庫

下川裕治と言えば、旅行作家としてある程度知名度のある作家である。彼の名が売れるきっかけになったのは「12万円で世界一周」という究極の貧乏旅行をまとめた物で、その後、タイや沖縄に入れ込む作家として、その名を確保して行く。その下川裕治が今回挑むのが格安航空券「LCC」の飛行機を使い、世界一周を行うというかなり無謀な旅である。LCCと言えば、サービスを極限まで削減して、その代わりに運賃をローコストで提供する航空会社で、日本でも最近その航空会社が幅を利かせ始めている。本書「格安エアラインで世界一周」は、平成21年の出版で、まだ日本ではLCCの洗礼を受けていない時期ではあるが、アジアや中東、ヨーロッパでは既に一般的になっている。そのLCCのみを利用して世界一周を行い、ルポルタージュにまとめたのが「格安エアラインで世界一周」である。チケットを押さえるために、滞在する国でPCを駆使し、次に搭乗するLCCを予約して行くというのは結構神経を使うし、またLCCのみで旅をするということは、滞在国での滞在時間がわずかしかなく、観光などをしている暇もないことを意味している。その中でもLCCの発展と未来について、下川裕治独自の視点で語られているのがこの本の特徴だろうと思う。LCC自体もエリアによって、そのサービスは様々。普通の航空会社の格安航空券と同じようなサービスをする会社もあれば、食事は有料、毛布も出ないなんてこともある会社もある。そうした中でも、旅の苦労と表裏一体の楽しさが表れているのが、この本で伝えたいことであると言える。下川裕治という人は、そういう普通の人が関心を持たない事柄について関心を持つ、独特の人なのだと思う。

コメント

タイトルとURLをコピーしました