「パソコン創世記」富田倫生 青空文庫

インターネットの図書館とも呼ばれる無料で電子書籍が読めるサイト「青空文庫」。その創設者である富田倫生氏の処女作がこの「パソコン創世記」である。内容は、半分がアメリカでのパーソナルコンピューターの発展の歴史、もう半分がNECのパーソナルコンピューターの歴史に焦点が合わされている。ただ違和感を感じるのが、第1章の後半に収められている一人の若者とコンピューターの関わりについて。この内容がカルトとも言えなくもないヤマギシ会の話になっているのである。富田倫生氏の「青空のリスタート」によれば、この若者と富田氏は先輩後輩の関係にあるらしいが、パーソナルコンピューターの歴史とはなんの関係もない。そこが違和感が残ってしまう。「青空のリスタート」はふざけ調の文体で面白くなかったが、こちらはまじめに書いているので読みやすい。ただし、当初書籍として発刊されたものを後で電子書籍化するにあたって増補した部分が異常に長い。それはNECがPC-9801シリーズを出した後の部分が話が長くなっている要因である。とはいうものの、当時中学生でパーソナルコンピューターに感心を持っていた僕としては(そして一度は挫折をした身としては)当時の熱気のような物が伝わってくるのが面白かった。快進撃を続けるNECにも色々内部で混乱があったことなど、初めて知った事実もある。青空文庫は基本的には著作権の切れた作品を無料で提供するスタイルを取っているので、この作品は呼びかけ人である富田氏の思い入れが込められているように思う。今のコンピューター業界を振り返って過去を見ると、どれだけ過去の人が夢想していたことが実現しているかが分かって、興味深い。

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