町山智浩+BS朝日「町山智浩のアメリカの今を知るTV」制作チーム著「引き裂かれるアメリカ 銃、中絶、選挙、政教分離、最高裁の暴走」SB新書

僕にとってみれば、町山智浩氏は、映画評論家であると同時に元雑誌編集者としての認識が強いのであるが、アメリカ在住なこともあってか、アメリカの社会の現状について紹介している一面もあり、それを受けてか、この本はBS朝日で放送されている「町山智浩のアメリカの今を知るTV In Association With CNN」という番組の内容を元に加筆、修正したものになっている。アメリカ在住の町山智浩氏ならではの視点でアメリカの現状を伝えるものになっていて、BS朝日で放送されているTV番組を見ていなくても、理解できる内容になっている。

この本では国民の分断化が進むアメリカの現状を伝えるものになっているが、僕からすると、民主主義で自由なアメリカが抱える重要な問題がこの本を読むことで初めて知った、という部分が大きく、結構衝撃的である。個人的にアメリカ大統領にドナルド・トランプ氏が就任した時からアメリカの姿勢に大きく変化が起きたような気がしていたが、この本でもそれは裏付けられている記述がされている。ただ、トランプ元大統領だけでなく、別の視点でも問題を抱えていることも浮き彫りになる。トランプ元大統領が引き金を引いたのは事実だが。

アメリカの政党的には民主党的思想を持っている僕からすると、トランプ元大統領と共和党の施策には同意できない部分が多く、「何をしたいのか?」と疑問に思うところが多い。その本心はアメリカは白人中心の社会にしたい、というところに尽きるような気がする。すでにヒスパニック系や黒人系、アジア系などの移民により、白人がアメリカ国民を占める割合が年々減少して行っているからである。

特に最終章であるアジア系移民の運動に関しては、自分がよく知っている俳優がインタビューに答えているところもあり、身近に感じられるテーマになっていたと思う。アジア系移民の話ではあるが、別にヒスパニック系でも黒人系でも根っこのところは変わらないと思う。

しかし、あまりに大きな国民の分断と問題を抱えているアメリカではあるものの、まだ集団主義的日本に比べればマシかな、と思うところはある。日本の妙な国粋主義的な考えは、どうも国際社会から完全に乗り遅れているような気がしてならないし、国の多様性を阻害しているようにも感じられるからである。

テーマは重い内容だが、町山智浩氏と藤谷文子氏の軽妙なやり取りにより、とても読みやすい。今のアメリカを知りたければ、必読の書になるのではないかと思う。

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