新城和博著「来年の今ごろは ぼくの沖縄<お出かけ>歳時記」ボーダーインク

これまでも、いくつかの沖縄関連書籍を読破し、その感想を書いてきたが、この本ほど変わったものはないであろう。というのも、作者である新城和博氏は沖縄・那覇出身で那覇育ち、今も那覇の首里で生活している出版社の編集者であり、この「来年の今ごろは ぼくの沖縄<お出かけ>歳時記」も沖縄でのみ流通する出版社、ボーダーインクから発売された本だからである。沖縄の県民に向けた沖縄県産本なので、日本本土での入手はちょっと面倒い。幸いAmazonや楽天市場では取り扱いはあるようなので、注文をして時間をかければ入手自体はできる。注文して翌日や翌々日入手というのは無理なこともあるが。

僕個人は新城和博氏の名前は知ってはいた。僕がよく読んでいた旅行作家の下川裕治氏の著作の中で「沖縄ブームを牽引した三人」の中に新城和博氏がいたからである。ちなみに残り二人は下川裕治氏とウチナンチュー2世の仲村清司氏である。この二人の本はよく読んではいたが、新城和博氏の著作だけは出版社が沖縄県産本を出す出版社だけあって、手に入れづらいところがあったのである。今回は、確かTwitterで発刊の情報を聞きつけ、Amazonで調べたら取り扱いはある、とのことで予約注文を入れた。沖縄県内の出版から2週間ぐらい遅れでAmazonから出荷の案内があり、手元に来たので読み始めたという次第である。

内容は、2015年から2022年までの新城和博氏の体験する何気ない日常生活をつらつらと書き綴った歳時記であり、一種のエッセイと言ってもいいのではないかと思う。新城和博氏の何気ない日常が描かれているので、大きな出来事があるわけではないが、その分沖縄で生活するということはどういうことかがわかりやすく書かれていると思う。

そして、時代が2023年に近づくにつれ、首里城焼失やコロナ禍での生活など、結構僕にとっても身近な話題が出てくるので、シンパシーを感じるようにもなっている。色々な制約の中でも、新城和博氏の生活はどことなく毎日を楽しむ様子が描かれていて、重いテーマにはなっていないところが特徴である。コロナ禍の制約下でもどこか前向きな雰囲気を漂わせる新城和博氏の生活は、楽しいものを感じさせるものがある。

その他にも仲村清司氏が批判していた農連市場の建て替えに対しても意外と前向きな態度をとっていたり、タコライスの沖縄での普及に関する沖縄県民でないと分からない道路を経由した普及説を唱えたり、なかなか面白い。沖縄ファンではあるものの、ウチナンチューではない僕としては、わからない部分が多いのも事実だが、それでも読みやすいのである。

それとやはり沖縄社会は狭いなと思ったのが、「やちむん」の奈須重樹氏のライブを見に行く、というエピソードのことで、内容自体はライブの感想でもなんでもなくて、ライブに行く途中の街歩きの話なのだが、奈須重樹氏と知り合いというのが、僕の読む沖縄本のどこかで必ず繋がるエピソードとして、実感した次第である。

沖縄病にハマっている人にとっては、必読の本ではないかなと思うが、まあ普通に沖縄を観光地と捉えている人には、そんなに読むべき本でもないと言ってもいいかもしれない。僕は沖縄病に罹っているので、大変面白い本だとは思ったし、買って良かったとは思っている。

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