企画:NPO法人沖縄青少年自立援助センターちゅらゆい 原作:藤井誠二 作画:田名俊信「居場所をください 沖縄・kukuluの学校に行けない子どもたち」世界書院

原作者の藤井誠二氏が、自身の著書でしきりに語っていた沖縄のNPO法人沖縄青少年自立援助センターちゅらゆいが運営するkukuluという子どもたちの居場所を提供するところでの、子供たちの家庭崩壊や非行等に走った出来事をどう自立させて行くか、という事実を元にストーリーを描き、田名俊信氏が漫画でそれを表現したものが、「居場所をください 沖縄・kukuluの学校に行けない子どもたち」という本である。

漫画なのでとても読みやすいが、内容は結構重い。行き場を失って学習することすら叶わない子どもたちを支援するkukuluという居場所がこの漫画の舞台にはなっているが、一見すると温暖な気候で暮らしやすいと思われがちな沖縄が、実は日本の貧困率の平均を大きく上回り、子どもたちは学校でいじめを受けたり、親から虐待を受けたり、親に相手にされていなかったりで、学習を受ける機会すら奪われ、どん底に落ちていくことが日本のどの地域よりも多いという事実や、どん底に落ちた子供たちがkukuluに来たおかげでどう立ち直っていくか、という描き方に、沖縄が抱える問題の根の深さを感じるところはある。実際、漫画の第一章はkukuluの代表である金城さんの経歴が漫画になっていて、彼自身も登校拒否という経験を通じて、子どもたちに接しているという親身になっているところもあり、沖縄の持つ負の側面をわかりやすく描いている。

僕自身、子供の頃にはどちらかというといじめられっ子だったこともあり、漫画に登場する子どもたちの心境に共感できる部分は強い。ただ、僕の場合は漫画に登場する子どもたちほど酷いいじめを受けなかったため、不登校ということはなかったが、子供の頃には同級生に午前中不登校の男の子がいたのを思い出していて、彼も苦悩していたのかな、と思い起こすことがある。僕は彼に対して特に何もしなかったし、友達でもなかったのでアクションは起こさなかったのだが、今考えるとこの漫画の世界のような事柄が起きていたのかなとも思う。

漫画の冒頭とラストには金城さんの想いや対談も文章で掲載されているが、これもまた、真剣に考えなければならない内容ではある。沖縄に限らず不登校の子どもや親から虐待を受ける子どもたちは日本全国にいるとは思うのだが、沖縄の場合、その地域風土に根ざした問題を抱えていることもあって、深刻度合いは高い。この実態を理解しやすくするのに、漫画という手法を取ったのは、正解かと思う。

こういう漫画を手に摂り、読むことで、子どもたちが抱える問題を大人がどう寄り添って解決していくかが、試される部分であると思うし、真剣に考えないといけないと思う。

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