ミュージシャンの坂本龍一が亡くなったのは2023年の3月28日のことだった。それから1ヶ月を経たない間に、新潮社は2009年に単行本として発刊していた坂本龍一の人生を振り返る自伝である「音楽は自由にする」の文庫本版を刊行した。僕も刊行後割とすぐに購入はしていたのだが、一緒に買った他の書籍を読む方を優先してしまったために、この本の読書のタイミングが7月になってからになってしまった。
前述のように「音楽は自由にする」は坂本龍一の自伝ではあるものの、本人が文章を書いたと言うよりは書籍には現れない「エンジン」編集長とのインタビューから繰り出される言葉をインタビュアーの質問を完全に取り払って坂本龍一の発言のみで構成した内容であるため、半ばインタビュー書籍のように感じる。
坂本龍一の半生を知ることができたのは、興味深かった。彼が学生時代に学生運動に入れ込んでいたとか、子供の頃から楽器は習ってはいたものの本気ではなかったとか、何処で間違って音楽の道に進むことになったのかとか、YMOの裏話とか、映画「ラストエンペラー」の裏話とか知ることができたのは、面白かったと言える。
ただ、本が読みやすいかと言うと半分ぐらいは読みづらいな、とは思っている。坂本龍一の発言に色々注釈がつくのだが、その注釈が細かすぎて読みづらかったのである。坂本龍一が影響を受けたアーティストの名前に対して注釈がついていたりして、章の末尾にその注釈の解説が細かく書かれているのであるが、ここが読んでいて頭に入ってこない。本文でスルーして読んでいた部分を説明されても疲れるだけだなとは感じていた。
単行本の文庫本化なので、2009年までの人生しか語っていない。その後は別の本で語られるようだが、そちらは手を出す気にはなってはいない。僕が坂本龍一のファンであるわけではないことにも起因している。ただ、死去されたことの追悼の意味で文庫本化された「音楽は自由にする」を購入して読んだと言う部分はある。
坂本龍一に関心のある人は読んでみても損はないし、それぞれの楽曲作成秘話みたいな部分も語られているので、音楽好きには面白い内容ではないかと思う。
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