2014年の「GODZILLA」や2016年の「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」で一躍監督としての評価を得たギャレス・エドワーズが制作したオリジナルストーリーの映画が、この「ザ・クリエイター/創造者」である。
物語のあらすじは人類と人類に反旗を翻して人類を倒そうとするAIとの死闘を描いたSFアクション映画なのだが、実はそんなに単純ではない。AIを倒そうと画策しているのはアメリカであり、近未来のニューアジアでは人類とAIの共存が図られているため、アメリカという国の傲慢ぶりが目立つ作品になっている。映画の中でもだんだんヴィランがアメリカの軍部というのが明確になってくるし、ニューアジアにおける人類とAIの共存が物語の中核を成している。
ストーリーは、アメリカの軍部にいたジョシュアという男がニューアジアでマヤという女性と恋に落ち、マヤはジョシュアの子供を身ごもるが、アメリカのAIに対する攻撃によりマヤは命を失い、ジョシュアも失意のどん底に陥る。5年後に軍部の指示により、ジョシュアは再びニューアジアに戻り、AIを生み出した創造者、ニルマータを抹殺する任務に就くが、AIの基地で出会ったAIの子供のアルフィーと接するうちに次第にAIを守る方に行動が傾いていく、という展開である。
人類対AIの死闘と聞くとテクノロジーへの警鐘をテーマにしていそうだが、実際はテクノロジーへの警鐘ではなく、世界のリーダーたるアメリカの傲慢ぶりに対する皮肉のように見える作品として、ストーリーが成立している。なので、物語が進むにつれ、ジョシュアはアメリカの軍部と対立をしてアルフィーを保護し、ニルマータを探してニルマータの正体を突き止めていくことになる。ハリウッド映画ではあるが、アメリカ万歳映画になっていないのは意外でもあるし、面白い設定だと感じた。
舞台がニューアジアということもあってか、ロケーションがアジアの各国に及んでいるばかりか、映画のクレジットや登場人物のセリフに日本語が随所に使われ、さらに渡辺謙が脇役で出演ともあり、アジアを強く意識させる作品に仕上がっている。時代が欧米中心からアジアにシフトしているのを象徴した作品である。
最近のハリウッド映画はスーパーヒーローものかシリーズものが多く、なかなかオリジナルのSF映画を見る機会が少なくなっているが、この作品は久しぶりに見応えあるオリジナルのSF作品だと言える。SF好きならば期待していい。
IMAXシアターで鑑賞したが、アスペクト比はIMAXにフィットしているわけではなく、シネマスコープサイズよりさらに横長のワイドスクリーン映像なので、迫力の面では若干スポイルされている感は否めない。ただ、ワイドスクリーンの効果は絶大で、広大なロケーション映像が堪能できる。IMAX DMRによるリマスタリングされた色彩も素晴らしく、映像に没頭できる。
音響も12chサラウンドであるが、終始観客を取り囲むオーケストラや環境音、イマーシヴなサラウンドで観客を圧倒させている。DOLBY CINEMAのDOLBY ATMOSでも同様の効果は出ていると思うが、IMAXならではの豪快な音響は魅力的である。
5ヶ月ぶりにIMAXシアターで映画を見たが、満足のいく一作である。
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