スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド シーズン2第6話「ロスト・イン・トランスレーション」(Paramount+/WOWOWオンデマンド)

あらすじ

エンタープライズはバノン星雲に来ていた。そこにはファラガットも来ていて、ワープ航法に必要なエネルギー、デューテリアムが豊富にあった。連邦はバノン星雲の中にデューテリアムの精製所を作るべく、エンタープライズとファラガットに指揮権を委譲していた。

ウフーラは、寝不足の日々が続いていたが、バノン星雲のデューテリアムをエンタープライズが収集を始めた時、奇妙な唸り音が聞こえ、幻覚を見るようになる。その幻覚には死んだはずのへマーの姿もあった。

ウフーラの幻覚はだんだん激しくなり、エンタープライズのクルーが死んでしまうシーンまで見るようになる。その際に、ファラガットの副長に昇進したジェームズ・カークがエンタープライズに来ていて、ウフーラに殴られたことから、カークはウフーラの幻覚の謎を一緒に解こうとするようになる。

一方精製所は動作がおかしくなり、ウーナの指揮の元、修復にあたるがペリアはウーナの指示を無視して調査を行い、誰かが破壊工作をしていることを突き止める。ウーナはペリアの勝手な行動に怒りをぶちまけるが、ペリアの調査の結果、クルーの一人がウフーラと同じ幻覚を見ていて、破壊工作を企てたことを知る。

幻覚を見ていたクルーは医療室に運び込まれるが脱走し、エンタープライズのワープナセルを破壊する。そして、そのクルーは死亡する。

ウフーラはだんだん正気を失いつつあったが、幻覚を見ていたクルーの脳と自分の脳を比較して、何者かが自分達にコンタクトを取ろうとしていたのではないか、と考え始める。そして、カークの助けもあり、未知の異星人がデューテリアムの中にいて、彼らが生き延びるためにウフーラたちに謎の唸り音や幻覚を提示していると直感する。

感想

今回の話はウフーラの、死と向き合えない人生が少し変わって、死と向き合えるようになる話である。ウフーラは家族がシャトル事故で死んでからその死に向き合えないでいたし、エンタープライズで交流のあったヘマーも死んでしまい、その事実から目を背けていたが、彼女が幻覚でそれを見るにつれて、その幻覚の意味を次第に知ることになり、異星人の救出に行動を駆り立てる運びになるものである。そして、それが成功裡に終わってから、家族やヘマーの死に向き合えるようになる、という展開である。

物語のキーになるのは、ジェームズ・カークだと思う。これまでもゲスト出演してきたカークだったが、いずれも仮定の時間軸での登場で、リアル時間軸での登場ではなかった。今回は、正式にファラガットの副長に任命されたという状況の中、ウフーラの体験する幻覚に対処する役割を果たしている。以前のエピソードでも描かれたラアンとの関係性もこのエピソードで多少なりとも描かれ、シリーズの連続性は保たれている。そして、ラストでスポックと正式に出会うことになるのは、感慨深い。「宇宙大作戦」の世界観への導入的出来事である。

一方でデューテリアムの精製所で作業するウーナとペリアの喧嘩めいた関係については、面白いと思う。ペリアのかつての生徒がウーナだったという設定は、現在ウーナの方が上官である設定と差異を生じさせるものであり、この二人のチグハグなやり取りは楽しいものになっている。

基本的には全く新しい異星人とのファーストコンタクトものなので、そこで生じる問題をウフーラがどう解決するかというサスペンスになっていて、物語の展開は目が離せないものになっている。

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