岡崎琢磨著「珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を」宝島社文庫

「このミステリーがすごい!」で大賞を逃したものの、同賞の隠し玉として刊行されたのが本作である。舞台は京都、主人公アオヤマがふと訪れた珈琲店タレーランで、理想の珈琲を飲むことができたことから、この珈琲店に通い出すようになる。ここのバリスタ、若い切間美星は実はすごい推理をする才能の持ち主だった。アオヤマと美星は、いくつかの謎を解決しながら、次第に親しくなるのだったが、美星には過去にある男性の心に強引に入ってきて、それに対して奥手だったために、傷ついた過去があった。最初は短編のように1章ごとに事件が起こり、それを美星が解決するという軽妙な展開だが、後半は、美星の過去にまつわる事件がメインになり、話が緊迫してくる。それは物語が加速していくようで、続きが気になるうまい展開になっている。アオヤマの真の正体と、美星の過去、そしてこの二人の関係が後半に行くにしたがって、好奇心をかきたてるような話立てになっていて、興味深い。ベストセラーだということだが、納得できる話である。すでに続編も刊行されているようで、この二人の関係がどうなるのか、好奇心をかきたてられる。ちなみに珈琲のうんちくも豊富にあり、勉強になるところもある。

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