リリー・ブルックス=ダルトン著「世界の終わりの天文台」(創元海外SF叢書)

 Netflixオリジナル映画で、ジョージ・クルーニーが監督・主演を務めた「ミッドナイト・スカイ」、その原作本がこのリリー・ブルックス=ダルトン著の「世界の終わりの天文台」である。「ミッドナイト・スカイ」が結構謎を残したまま展開し、そのまま物語が終わってしまったため、原作本である「世界の終わりの天文台」を読んで補完しようとしたのだが、実は原作本自体あまり謎解きをするタイプの小説ではないため、映画の補完にはならない結果に終わってしまった。原作も映画と同じく、地球で何かが起こり、人々がいなくなるのだが、老研究者オーガスティンは北極の観測所に留まり、生き残っている。そして、どこに隠れていたのか、アイリスという少女と出会い、二人で生活をしていくのが地球の視点、そして木星探査に行ったサリーをはじめとする宇宙飛行士が木星から地球に帰る間、地球との交信が取れず、心配が膨れ上がるというのが宇宙の展開である。なぜ、地球に人がいなくなったのかは、本には書かれていない。これは映画でも同じである。そしてアイリスという少女の存在は映画も本も実は同じ扱いであることが示唆される。それはオーガスティンの過去の後悔と一致している。その一方で些細な細部は映画と本では結構異なっている。最大の違いはサリーが地球に戻るという点だろう。ただ、戻るところまでしか書かれていないので、その後は不明で読者の想像に委ねられている。映画も本も本質的には同じなので、どちらを見ても読んでも印象は変わらないと思う。

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