映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」(監督舞台挨拶付き/T・ジョイ PRINCE品川)

2016年公開で、予想外のヒットを記録したアニメ映画「この世界の片隅に」。その作品に30分以上の追加シーンを収録し、新たな解釈を与えたのが、この「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」である。アニメ映画としては異例の168分という長尺作品になっているが、だれるシーンが全くなく、あっという間に上映時間が過ぎていくのが、この作品の特徴である。追加シーンは、主に主人公すずさんの心の拠り所になる遊郭で働く女性、リンさんのエピソードが追加になっているが、それ以外にも細かい点が追加収録されていて、様々な登場人物の心の動きがさらに進化していて、複雑な人間ドラマが描かれている。主人公すずさんだけでなく、その他のキャラも深い描かれ方をしているのがポイントである。そして、追加シーンが既存シーンと浮くことがないというのも、この映画の完成度の高さを示している。今回、片渕須直監督の舞台挨拶付きの上映回を鑑賞したが、片渕監督の話では、すずさんの生まれ育った広島の江波と呉は遠いようで実は近い、登場キャラの心のありようも同じで、愛する人が心が遠く、そうでない人が近い、そんな話にしました、と語っていたが、納得の出来栄えである。オリジナルの「この世界の片隅に」の売り上げは抜かせないとは思うが、チャンスがあるなら、是非とも観るべき映画である。

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