旅行作家として有名な下川裕治のデビュー作が、「12万円で世界を歩く」という作品だった。これは、編集部から12万円を渡され、その予算内で世界各国を旅行していく、という内容で、貧乏作家として名を馳せてしまった下川裕治の記念すべき作品である。実際は旅行していく中で予算が尽きてしまい、追加で予算をもらって旅行するという展開が多かったが、12万円という限定された予算内でどう旅行していくかは、読み応えがあった。それから30年の月日が経ち、この企画を今、実施したらどう変わるのか、という意図で「12万円で世界を歩く」で訪問した国々を再度12万円という予算で旅をするというスタイルをとっているのが、この「12万円で世界を歩くリターンズ」である。今回は、サブタイトル通り、赤道、ヒマラヤ、アメリカ、バングラディッシュに限定して12万円で旅をしていくし、バングラディッシュに至っては旅行ではなく、そこで住まいを確保して生活するというスタイルになっているが、今回の旅行が12万円で旅行できたのかというと、ちょっと怪しい。飛行機のLCCを使えば12万円内で旅ができるところを、あえて30年前と同じバスの旅を敢行したために、予算超過、というパターンが多かったのである。バスの衰退と、LCCの発達という予想外の展開が、今回の旅で如実に現れていたように思う。なので、今作を読む前には「12万円で世界を歩く」を読んでからの方が分かりやすいと思う。
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