以前、「リメンバリング オキナワ」という本の感想を書いているが、その沖縄における写真と解説文を掲載したシリーズの第一弾になっているのが、この「沖縄島建築 建物と暮らしの記録と記憶」である。写真を岡本尚文さんが担当しているのは共通しているが、今回は沖縄の建築物をテーマにした書籍にしてあるため、監修を建築士の普久原朝充さんが担当しているのが、「リメンバリング オキナワ」と異なる点である。
この「沖縄島建築 建物と暮らしの記録と記憶」では、10件の建物についての写真とそこに住む人々へのインタビュー、建物の解説で構成されている。決して有名な建物ではないが、戦後沖縄の歴史と人々の暮らしが記録されている建物ばかり登場し、それは強いインパクトを受ける。時代の流れにより、将来消滅しそうな建物もあり、その時代性の記録と記憶は、強烈な印象を読者に与える。
ただ、僕が建造物について全くと言っていいほど知識がないのも原因だと思うが、建物の解説についての説明がよく理解できなかった。できるだけ噛み砕いて説明しているとは思うのだが、それでもイメージがつかめなかったのは事実である。また、図面で建物の説明をしている箇所は、正式な設計図的な書き方ではなく、一般読者にわかるように書いているせいか、図面の読み方を前に習った僕としては、逆に混乱する場面が多かった。
それでも、建物に住む人々たちへのインタビューには好奇心をくすぐられるものがあるし、他の本でも登場する首里劇場や、聖クララ教会などはなじみになっているので、とっつきやすい部分もあり、逆にその建物に対する更なる知識の深掘りができて、ためになる部分もある。
本の後半を飾る「ARCHITECTURE TOUR」は、写真と簡単な説明で構成され、主要10件の建物の紹介以外の貴重な建築物を紹介しており、この簡潔さが逆に読みやすいと思ったりもする。こちらの方でも他の本にも出てくる建物が登場したりするので、沖縄の歴史的建築物は、意外とどの視点でも語られることが多いのかなと思ったりする。
これで、「沖縄島」シリーズ3作のうち2作を読破したのだが、なかなか面白いシリーズだと思う。価格が2000円と少々高いのは難点だが、読む価値はあると思う。残り1冊は、沖縄食文化についての本らしいので、これもいずれ読んでみたいと思っている。
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