スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド シーズン2第2話「苦難を乗り越え、星へ」(Paramount+/WOWOWオンデマンド)

あらすじ

エンタープライズの副長であるウーナは、遺伝子操作を受けているイリリア人であることが発覚したために逮捕され、司法取引を持ちかけられていた。それは、ウーナが艦隊を除隊し、過去の経歴も抹消すれば、罪を償わずに連邦市民としての生活はできる、というものであった。

その頃、パイクはウーナの友達であり、やり手の弁護士であるニーラの元を訪れ、ウーナの裁判の弁護を依頼する。初めは拒絶していたニーラだったが、パイクの必死の頼み込みに対して弁護を引き受ける。

ニーラはウーナの元を訪れ、彼女と共に裁判を戦うことになるが、連邦の法律上、ウーナには厳しい厳罰が待ち受けていた。

ニーラはラアンに艦隊の法律書と誰がウーナがイリリア人であることを艦隊にバラしたのかを探らせる。ラアンはウフーラにエンタープライズのクルーの個人日誌を提出するよう求めるが、ウフーラは規則を曲げると不利になるからと拒絶する。

ウーナの裁判を巡って、エンタープライズの前の艦長であり、ウーナを高く評価していたエイプリル提督や、エンタープライズのクルーたちがさまざまな証言をする。その証言はウーナの弁護としては一進一退だった。

そのうちにウーナがイリリア人であることを艦隊にバラしたのが他ならぬウーナ自身であることが分かる。そして、ウーナが幼少期から受けてきた差別や偏見について、ニーラの誘導によって明らかになる。ウーナはリスクをとってでも艦隊が掲げる理想に向かって希望を抱いていた。

だが、その話も検察側の法律を厳密に守る姿勢により、危うくなる。パイクがウーナがイリリア人であることを知っていながら隠したという罪や、エンタープライズのクルーたちの姿勢をも追求していく。それに対し、ニーラは法律に沿って対抗する。

感想

シーズン1最終回で連邦が禁じている遺伝子操作を受けていたのにそれを隠して艦隊の士官になっていたウーナが逮捕されて、その話の続きが今回のシーズン2の第2話の話につながっていくのだが、今回のエピソードは、いわゆる裁判物のエピソードであり、ウーナが有罪になるのか、無罪になるのかがスリリングに描かれている。

しかし、それ以上にこのエピソードが心を打つのは、連邦という組織ができる未来になっても起きうる人種差別や偏見に対して、どう向き合っていくか、という現代の世界が抱える問題に対して、スター・トレックの世界観ならではの方向性を見事に打ち出している点であり、その結末については、秀逸な展開と言わざるを得ない。

連邦が遺伝子操作を禁じているのは、「宇宙大作戦」と「スター・トレック2:カーンの逆襲」で登場した優生人類のカーンの話と関係していて、カーンの子孫がラアンという話もこのエピソードでは強調されている。それだけ遺伝子操作による生命の存続に対して連邦は危機感を抱いているのであるが、それに対して法律は曲げないものの、線引きはずらすこともできる、という解釈を用いて物語を完結させる脚本は、すごいと思った。

ウーナが幼少期から受けてきた差別や偏見に対してどう対処してきたか、どうせざるを得なかったかが裁判の過程で明らかになり、ウーナに対して同情するような展開になっているのは、高度なストーリーラインだと言える。

そして、そこに話を持っていくのが、ウーナの友人であった弁護士のニーラだったというのも感慨に耽る思いである。

現在の世界が抱える問題に対して、ある一定の解決策を提示できているのは、エピソードとして優れていると思う。

コメント

タイトルとURLをコピーしました