事件は7月7日の午後7時に起こった。新進作家、坂井正夫が青酸カリで死んだのだった。現場状況から自殺として扱われたが、彼に原稿チェックを頼んでいた出版社社員中田秋子は、その死に不審を持ち、独自に調査を始める。一方ルポライターで坂井と顔なじみの津久見伸助も事件の記事を書くことを編集部に依頼されたことから、事件に首を突っ込みだす。二人がバラバラに事件を追う中、たどり着いた真実とは。
ミステリーとして、最後の落ちは意外だった。物語最初の方である格言が書かれているのだが、落ちがまさにそれだったとは驚きである。物語は時系列的に描かれているが、それも実は伏線を張っている。読む方にネタバレをしないように感想を書くのは至難だが、この真相は、「そんなバカな」と言わしめるに十分な内容である。登場人物が数名出てくるが、後半に行くにしたがって、その関係がややこしくもつれてくるのも特徴だろう。最初に刊行されたのはかなり前ということで、時代を感じさせるところもあるが、面白くて、結構一気に読める内容である。
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