岩中祥史著「博多学」新潮文庫

いわゆる地方都市の文化や歴史、人々の暮らしや考え方を書き記したエッセイのような本が、この「博多学」。内容が「福岡学」ではなく、「博多学」なのは、博多という地名とそのエリアが今の博多を形作っているからである。東京、大阪に比べ、アジアに近い位置にあることから、国際的に影響を大きく受けている点が、博多の良い点であると言える。しかし、この本を読んでいて、デジャブを感じる。僕がよく読む沖縄関連のエッセイ本と、極めて近い書き方なのである。この「博多学」の博多を沖縄に置き換えても、そのまま通りそうな内容である。どちらも中国、韓国を始めアジアと大貿易をしていろいろな文化の影響を受けてきている都市であり、その歴史が今の博多や沖縄を形作っている感じである。今、僕は福岡に住んでいるが、そのアジアとの交流という点では、納得のいく説明がされている。もちろんまだまだ知らない博多の側面もあり、それをこの本を読むことで、知識として蓄積されたと思う。残念なのは、この本の初版刊行は2002年で、すでに10数年経過した今、ちょっと情報が古い感触を受ける点である。それ以外は、博多を知るのには面白い本であると言えよう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました