僕が藤井誠二というノンフィクション作家を知ったのは、沖縄ブームを生み出した仲村清司との共作である「沖縄オトナの社会見学」や「肉の王国」といった書籍である。これらの書籍は、沖縄の文化をおもしろく紹介する内容になっている。これらの本で、藤井誠二というノンフィクション作家の名が僕の脳裏に焼き付いた。その藤井誠二が沖縄の売春についてのノンフィクション大作を執筆中と聞き、試しに買ってみたのがこの「沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち」という本である。ソフトカバーではあるが単行本で、347ページもある大作である。それまで僕にとっての沖縄といえば、仲村清司や下川裕治が記したユニークな文化を持った地域というイメージが強かった。しかし、その裏では、2010年頃まで売春街が存在していた側面もあったのである。2010年頃の警察や婦人団体、市民団体の活動により、売春街は消滅していくことになるのだが、売春街で働いていた当事者たちに藤井誠二はインタビューをして、売春街の成り立ちや売春婦の生き様について詳細に抉り出していく。そればかりか、売春街が成立した経緯や、戦後の沖縄を支配していたアメリカ兵たちの暴行についても追求をやめず、売春街が成立せざるを得なかった現実をも暴き出している。売春婦たちの多くが奄美大島出身であるという話や、沖縄を舞台にした小説をいくつも書いている作家の佐木隆三へのインタビューなども交え、戦後沖縄が歩んできた裏の歴史を克明に暴き出しているのが、この本である。2019年に買ったこの本は、内容がヘビーだったので途中で挫折し、そのままになっていたのだが、ここ数日で再読しようと思い立ち、約1週間で読破したのが、このブログに書いた理由である。売春はいけないことだが、沖縄において売春とは家族を養うための仕事でもあったし、借金返済のための仕事でもあった。そういう裏の歴史が存在していたことが明るみになったという事実を知るだけでもいいと思う。
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