下川裕治著「週末ベトナムでちょっと一服」朝日文庫

旅行作家である下川裕治がシリーズで出しているアジアの週末旅行のベトナム編が、この「週末ベトナムでちょっと一服」である。当然他の下川裕治の本と同じく、ベトナムの観光ガイドではなく、ベトナムでの変わった過ごし方が描かれているが、本作で特徴的なのは、ベトナム戦争とそれに付随していた反戦運動について、かなりページを割いて書かれていることであろうか。下川裕治自身の若い時の思想もあるのだと思うが、それと実際のベトナムの状況のズレについて、かなり細かく書かれており、シリーズとして旅行ガイドというより思想書という側面が強くなっている。この辺は、さすがにベトナム戦争時にはまだ生まれていないか、子供時代だった僕にはあまりピンとこない部分ではあるのだが、下川裕治が言いたいことは分かると思う。日本から見たベトナムと、実際のベトナムが異なっていたことに対する違和感を、彼は言いたかったのではないかと思う。そういう意味では下川裕治の私的な部分が見え隠れする本であるとも言える。他の本でもそういう面は少なからずあるのだが、この本ではそれが如実である。それが多少違和感を持つ部分でもある。

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