ノンフィクションライター藤井誠二さんが沖縄での生活を綴った日記シリーズ第3弾が、この『沖縄では海を見ない 「内地」との二拠点生活日記 3』である。前2作がインターネットに投稿された日記記事をベースに書籍化されたのに対し、今作はインターネット上で掲載する場を失ったため、ほとんどが本邦初公開の記事で構成されている。また、今回の特徴として、日記というよりも評論的な記事が多く含まれ、それらはインターネットや新聞、書籍などで発表された記事の再掲載が目立つ。
藤井誠二さんの日常が沖縄を舞台に語られるのが基本ではあるが、本作を通じて東京と那覇という二拠点での生活がどのように成り立っているのかが明らかになり、非常に興味深かった。東京にも那覇にも住まいを持っていると知り、住宅費の負担はどうしているのかと疑問を抱いていたが、どちらの物件もかなり格安で手に入れているとのことである。マンションを購入した自分としては、この点が特に印象的であり、フリーランスのライターとしての柔軟な生活の一例として参考になった。
藤井誠二さんは半移住者という立場から、沖縄が抱える社会問題について積極的に意見を述べている。特に、無意識のうちに沖縄を批判する「内地」の人々に対して反論する姿勢が多くの箇所で見られ、その人柄が強く伝わってくる。また、本書では様々な人へのインタビュー記事が再掲されており、それが読者の記憶に残る内容となっているのも特徴だ。
例えば、僕がこれまで気にも留めていなかったYouTuber「せやろがいおじさん」こと榎森耕助さんへのインタビューが収録されていた。このインタビューを通じて、彼に対して抱いていたある種の偏見が取り除かれ、初めて彼のYouTube動画を視聴するきっかけとなった。その結果、「せやろがいおじさん」の主張が非常に的を射た内容であることを再認識することができたのは、大きな収穫だった。
本のタイトルでもある『沖縄では海を見ない』という言葉には深い意味が込められている。多くの日本人が沖縄に対して抱くイメージは、リゾート地としての青い空や青い海だ。しかし、藤井誠二さんにとってそれは違う。オスプレイが飛び交う危険な空や、天候の悪い日が多い沖縄では、実際には青い空や青い海を目にする機会は少ないという現実があるのだ。
この本は一種の個人的な告白文であるが、それと同時に沖縄から日本全体を見つめることで浮かび上がる多くの問題にも気付かされる。本書を読むことをきっかけに、新たな視点で沖縄や日本について考える機会を得られるだろう。そういった意味で、この本は非常に価値のある一冊だと言える。
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