山崎雅弘著「ウソが勝者となる時代」祥伝社新書を読んでの感想

僕が山崎雅弘さんの著書を読むのは2025年の春に読んだ「底が抜けた国」に続いて2冊目である。今回は、「ウソと言いがかり」をつける人々や歴史上の事件を題材にしながら、なぜ、そのようなことになるのか、対処法はあるのかに着いて詳しく書かれている。

「ウソと言いがかり」を平気で吐く人は特に近年増大している。この本の中でも章をさいて、ドナルド・トランプ大統領やNHK党の立花孝志を実例として挙げている。当然ながら、彼らは平気でウソと言いがかりを「真実である」という謳い文句と共にSNSで発信し、それを信じる、もしくは面白がる人々によって拡散されることで、大きな被害、人々が誹謗中傷を受けた上で自死されるというケースも目立っている。

彼らのパターンは「真実」という言葉を多用するとある。「真実」はこの本からも明らかなように「事実」ではない。ウソと言いがかりをつける人々が思い込んだ事柄が「真実」であり、「事実」ではないことを平気でばら撒く。

また、この本ではウソと言いがかりをつけるのが人に向けてだけではなく、国家として他国を侵略したりする場合にも使われることが多々あることを紹介している。ナチスドイツのヒットラー然り、大日本帝国の中国、朝鮮支配など、枚挙にいとまがつかない。

人種差別についてもこの本では同じくくりとして書かれている。アイヌの方々が北海道の先住民族ではない、と言い張る人々は当然「事実」ではないことを言い切っているし、関東大震災の後のデマで虐殺された在日朝鮮人の方々に対する誹謗中傷も然りである。朝鮮人虐殺では、東京都知事の小池百合子が追悼文を取りやめたと言う「事実」が問題であるという指摘もうなづけるものがある。

この本に書いてあることは「事実」を基に論理的に書かれているので、論理的にものを考える人にとっては、納得が行く内容になっているが、「真実」だと思い込んでいる感情論先行の人にとっては面白くないだろう。

ただ、近年の「ウソと言いがかり」の連発で社会が荒んで行く様を目の当たりにしている僕的には、かなり危険視している状況にあり、この本の内容にはうなづく場面が多かった。

ラストはその対処法なのだが、実は簡単な解決法はないのである。実直で論理的な人々が辛抱強く論理にて訴え続けるしかないという部分は納得はするが、精神的疲労を呼び起こすなとは思う。山﨑雅弘さんは「そういう時には一旦逃げてもいい」とは書いてあるので、戦いに疲れたら一時避難はありなのか、と少し楽になった感はある。Xあたりの酷い書き込みに対処するのは非常に疲れるので。

酷い時代だと思っているが、「ウソと言いがかり」が勝者であり続ける時代は長くはないというのが歴史研究の結果なので、自分にできる範囲で意見は述べていきたい。そうすることが、社会を良くするきっかけになるかもしれない。

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