仲村清司著「日本一ややこしい京都人と沖縄人の腹の内」光文社新書

このブログでも度々取り上げているが、沖縄病にかかっている僕は、沖縄に在住して、沖縄を紹介し続けたブームの火付け役の一人である仲村清司氏の書籍を読み、その感想を書いてきた。

しかし、その仲村清司氏は、2016年に新書で「消えゆく沖縄」という本を出版し、沖縄で暮らすことの重荷を漏らしていたし、2018年のAERAでは藤井誠二氏のレポという形で仲村清司氏の苦悩ぶりを伝えるとともに、2017年暮れに沖縄住まいを辞めて京都に移住したという話を聞いていた。ただ、沖縄では仕事があるから、沖縄と完全に縁が切れたわけではないことも知っていた。

2017年に京都に移住してからは、ネット上でのアクティビティは極端に減ったので、何をしているのかが全くわからなかった。たまにX上で他の方のYouTubeを引用するぐらいで、その存在自体が見えなくなっていた。

それが、2025年の春に突如、新書で「日本一ややこしい京都人と沖縄人の腹の内」というタイトルで、京都と沖縄という全く別の地域を結びつけるというタイトルだけでは想像だにしなかった内容の書籍を出版したのである。

このタイトルに込められているのは、当然京都に住まいを構えて暮らしている仲村清司氏が、京都で気づいたことと、沖縄で知り得たこととが実はかなり密接に結びついている部分が多いところから、観光名所という部分だけ共通する京都と、沖縄が実はかなり近い存在であることを証明するために書かれた本である。もちろん、京都は「いけず」という排斥的な言葉はあるし、沖縄も身内で固まって余所者を排除しようとする排斥的な地域という似たような部分もあるのだが、それが世間の思い込み的な部分も多く、実際は共通点が多々あるということがこの書籍で明らかにされ、驚愕の思いである。

僕は沖縄には何度も旅行に行っているが、京都はまともに観光したのは中学生の時の修学旅行の時だけで、その後はちゃんと観光はしていない。数年前に佐野元春のライブを見に京都まで出かけたこともあったが、その時はコロナ禍だったので、用心を重ねた上で、ライブのみ見に行ったので、観光や美味しい食事など全く楽しまなかった。だから、京都についてはほとんど知らない。人の噂話程度しか知らないので、この書籍に書かれている京都人の本質を知るにつれ、「なるほど」と膝を打った次第である。

戦争についても、沖縄で戦死した日本兵の中で京都出身者が多いというのは、初めて知った部分でもあるが、前に嘉数高台公園に行った時に京都出身者の兵士たちの慰霊碑があったことも思い出したので、京都と沖縄のつながりは意外に深いようである。

「消えゆく沖縄」以来、9年ぶりの新書出版ではあるが、筆のトーンは従来のままだし、沖縄在住時の後半の重苦しさは感じ取れないので、ようやく仲村清司氏の本来の姿を読み取ることができて、読み応えのある新書だった。

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