リサ・ジェノヴァ著「アリスのままで」キノブックスを読んでの感想

先日、映画「アリスのままで」を見て、心に残る何かがあった。この映画は2014年に制作されたもので、ジュリアン・ムーアが演じるアリスという女性が若年性アルツハイマー病に冒されてしまい、次第に記憶を失っていくという話である。

自分の母も生涯の最後は認知症だったので、ジュリアン・ムーア扮するアリスと母を重ねて見ていた節があった。

映画は素晴らしい出来だったのだが、認知症という病気の話なので、輸入盤Blu-rayでの視聴だと医学用語的にわかりづらい部分はあった。また、2時間以内という上映時間のためか、物語が整理されすぎのような感じも受けた。

映画のレビューを書いていた時、映画には原作小説があることを知った。原作小説もタイトルは「アリスのままで」だった。映画ではわかりづらかった部分を保管したいと思い、Amazonや楽天で原作本を探してみると、検索に引っかかるのは中古本ばかりであった。Amazonには新品も出品されていたが、値段がプレミア価格になっていた。それで「中古本でもいいか」と思い、楽天で中古本を注文して、届いてから読み出した。

原作本は2004年から2005年の時代背景の中、アリスが若年性アルツハイマーを発病して、次第に記憶が消えていき、愛する夫や子供の顔と名前すら思い出せなくなり、ついには鏡に映った自分の顔ですら自分と認識できなくなる様を静かに描いたものになっていた。

小説のポイントは、若年性アルツハイマーを発病したアリスの主観を中心に描いていることにある。認知症の患者を介護する介護人、だいたいはその家族を中心に描く話は多いとは思うのだが、アルツハイマーが進行していく患者の視点で描かれる話は珍しいと思う。認知症を介護する側からしたら、認知症を患っている本人の苦しみがこの小説を読むことで多少なりとも理解できる部分があるのである。

映画もそうだったが、アルツハイマーが進行していくにつれ、アリスの記憶は消えていくが、それでもアリスはアリスのままでいられたのか、という疑問は残ってしまう。小説のラストでは愛する子供の名前と顔ですら認識できない状態になっているのに、それでもアリスはアリスのままだったのだろうか? と考えさせられるところはあった。

映画で介護人である家族が綺麗すぎる描き方をしていると思ったものだが、小説を読めば視点がアリスの視点で描かれているのだから、家族の苦悩が薄いのは当然である。それでも結構アリスの視点で見ても家族の苦悩は出てきていると思う。

小説を読んだのは久しぶりだったし、映画も見ているし、認知症が治ることのない病気であることも知っているから、ラストがハッピーエンドにならないこともわかっているのだが、それでもアリス視点で描かれるストーリーには引き摺り込まれるものがあった。映画公開から11年を経過して、中古でしかこの本は入手できないのであるが、読む価値のある小説だと思う。

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