ホラー小説の大家にして、ベストセラー作家でもあるスティーヴン・キングが、ミステリーに挑んだのが、この「ジョイランド」である。あらすじは、年老いたデヴィンという男が、若い時に夏の間、アルバイトで勤めた「ジョイランド」という遊園地での出来事を綴るというもの。そのジョイランドでは、お化け屋敷でかつて、殺人事件が起こり、幽霊が出る、ということで話題になっていた。デヴィンはそれに興味を惹かれていて、アルバイト仲間が実際に幽霊を見た、と話したことから、事件に首をつっこむことになる、というものである。ただ、キングのこと、単なるミステリーにはなってはいない。どちらかというと、デヴィンの若い時の青春ドラマとしての要素が強い。恋人に振られ、失意の中、アルバイトに勤しむデヴィンと、その仲間たち、遊園地の職員との関係が詳しく描かれていて、青春ドラマとして納得のいくストーリーになっている。また、物語後半で重要な位置を占めるアニーとマイクという母子家庭とデヴィンとの関係性は、殺人事件と大きく関わっていくことになり、キーポイントになっているところである。キングの小説にしては比較的短い本ではあるが、話としては相変わらず面白い。他のキングの本が大作になりがちなのに対して、小品という印象を受け、読みやすいのではないかと思う。
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