これまで、下川裕治の著作物は、いろいろ目を通してきた。しかし、下川裕治の原点とも言える「12万円で世界を歩く」だけは、なかなか読むことがなかった。それは、本屋では朝日文庫の取り扱いが小さく、本屋でこの「12万円で世界を歩く」を見つけることがなかったからである。もちろん、積極的に探せば、ネット書店で容易に手に入るのだが、そこまでして読みたいかというと、そうでもなかったので、ネット書店から買うことがなかった。先日、繁華街に出て、大きな書店に行った時、たまたまこの「12万円で世界を歩く」を見つけたので、買って、今回読んでみた、というわけである。その感想だが、最初、12万円で世界一周をする話かと思ったら、そうではなく、ガチで12万円しか取材費を朝日出版社から渡されず、その中でやりくりして、世界のあちこちを訪ね歩く、という面白い企画だった。回数を重ねるごとに、本当世界一周に近い旅までしていることが明らかにされるが、目的地を決めて、12万円でどうやってやりくりするか、という企画自体が面白いものなので、下川裕治とカメラマンが悪戦苦闘する姿が描かれ、興味深い本になっている。その後の下川裕司の著作物を見れば、確かに原点とも言える内容である。バックパッカースタイルの旅の始まりがこの本にはある。描かれた時期が既に遠い過去になったバブル時代なので、今のインターネット全盛の時期では、もっと容易に世界を歩けるような気もするが、それを割り引いても、面白いエピソードになっていると思う。
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