アメリカのヤングアダルト小説の中で大ヒットを記録したシリーズ第1弾の上巻が本作、「ハンガー・ゲーム(上)」である。小説の成功が映画化をも果たし、映画自体も大ヒットを記録している。かつてアメリカと呼ばれた国の成れの果てがキャピトルと12の地区で構成されるパネムという国であり、そこで毎年12の地区から「贄」として少年少女が選出され、ハンガー・ゲームという殺し合いのゲームに参加させられるという話である。映画を先に観ていたので、ある程度話の筋は知ってはいたが、原作を読むと、深い描写が多く、パネムという国家とその周辺の12の地区の関係が詳しく描かれており、内容の良さに納得してしまう。基本的に主人公、カットニスという少女の視点から物語は描かれているが、彼女の住む第12地区の描写や、キャピトルとの対比、ハンガーゲームに至るまでの過程が、細かい描写で、世界観を作るのに貢献していると思う。下巻はおそらくハンガー・ゲームの攻防がメインになってくるので、その辺は楽しみである。映画版で観た時にはどうしてもハンガー・ゲームがゲーム・オーガナイザーの自分たちの都合でルールを変えるという展開になじめない雰囲気を醸し出していたが、小説だとそれすらも主人公の生命の危機を煽るものになっていて、ちゃんとリアリズムを持っていると感じる。
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