佐野元春「SWEET16 30th Anniversary Edition」を聞いての感想 その3(ライブBlu-ray)

3月29日に佐野元春の「SWEET16 30th Anniversary Edition」が届いてから、CDの方を先行して試聴してきたが、今日は唯一のライブBlu-rayである「SEE FAR MILES TOUR PART II LIVE AT YOKOHAMA ARENA 1993.1.24」を鑑賞した。その感想を書いてみたい。

このBlu-rayのベースになっているのは、1993年にリリースされた「See Far Miles Tour Part II」のライブVHS、レーザーディスク(のちにDVD化もされている)の元素材であると言える。オープニングの「See Far Milesのテーマ」からして、途中でフェードアウトしてしまうのもそうだし、「See Far Milesのテーマ」や「ミスター・アウトサイド」でスクリーンに映っていたCGの絵がオーバーラップされるのもそのせいである。すでに発表済みの楽曲の編集自体は同じではないかと思うが、マスターがビデオ素材なのか、撮影用フィルム素材なのかはわからないが、ジャギーが出ていないところを見ると、素材のフィルムからスキャンをし直したように思える。SD画像からアップコンバートした際のデジタル臭さがこの映像では見られなかった。

オリジナルのライブビデオからすると何曲も追加収録されていて、それらがライブの盛り上げに貢献しているのを見ると、ビデオを見ている僕もライブ会場でライブ音源に没入してしまう感覚を覚える。少なくとも、CD版のライブ音源からすると、ライブ本編は完全に再現されているようで、「彼女の隣人」で佐野元春の歌が詰まってしまうシーンもよく分かるようになっていて、観客の声援が理解できるようになっている。オリジナルのライブビデオでは「彼女の隣人」は横浜アリーナの公演の模様ではなく、大阪城ホールの公演の模様を収録していたようなので、今回は、元の横浜アリーナの演奏を元に戻したところで、よりリアルに感じるところである。

アンコールは、「また明日…」と「サムデイ」に集約されているが、その思い切りの良さが作品の出来に関係しているような気がする。CD版でアンコール曲を聴くと、ちょっと冗長かなと感じなくもないので、ライブビデオとしてのBlu-rayでは2曲に絞ったことで、テンションが持続している感じはする。

画質は少し前述したが、SDマスターのアップコンバートではないような気がする。ジャギーも出ないし、比較的解像度が高めである。広角で撮った映像だと観客の解像度はボケるが、デジタル臭さは少ないような感じはする。マスターはフィルムで編集して、それをHDスキャンしたのではないかなと思っている。色彩もBlu-rayの規格に沿った発色をしていて、かつてのVHS、レーザーディスク、DVDの時の滲みは感じられないので、その辺は進化していると思う。オリジナルのライブビデオ収録の楽曲と今回の追加楽曲での画質の違いもなかったように思う。

音声は2ch STEREOだが、よく見たら96kHz/24bitのハイレゾ収録だった。CD版のライブ音源とは明確な音質の差があるわけで、妙にリアルだなと思ったら、ハイレゾだったというところが意欲的である。ライブ音源のライン入力をハイレゾ収録していたとは驚きだが、これだけでもBlu-ray版の意義があると言ってもいいであろう。

これで、佐野元春「SWEET16 30th Anniversary Edition」の全てのディスクの試聴とブックレットの読破が完了したのだが、高額な代物だが、ファンにとってはそれだけの価値のあるプロダクトになっていると思う。僕個人は買って良かったと思えるプロダクトだと思った。

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