映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(IMAX 2D/ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13)

2022年度のアカデミー賞で最多10部門11ノミネートを果たし、前哨戦となる各賞を軒並み制覇し、アカデミー賞主要部門受賞が確実視されている映画が、この「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」である。僕は2022年の夏にすでにホームシアターで輸入盤4K UHD Blu-rayでこの作品は鑑賞済みであったが、アメリカより1年遅れとはいえ、無事日本でもロードショー公開が行われたので、いつも贔屓にしているIMAXシアターで改めて鑑賞した。

すでに去年の話なので、詳細なストーリーは忘れていて、新鮮な気持ちで鑑賞することができたが、改めて感じたのは、「この映画は、アート系の映画だな」ということである。マルチバースとカンフーというなんか予想外の組み合わせに、ミシェル・ヨーやキー・ホイ・クァンといったアジア系俳優を配しているところは、メジャーな大作映画では考えられないところがあるし、ストーリーも最終的にはバラバラな家族の愛が一つにまとまる、という展開にアート系の匂いを強く感じた物である。とはいえ、マルチバースとカンフーの組み合わせが意外なので、とても面白く見ることができた。また、アジア系俳優を配しているところにも、アメリカにおける有色人種への配慮があり、人種差別に対するカウンターカルチャーを感じるところもある。

マルチバースの世界で展開される物語なので、結構ストーリーは複雑。正確にはストーリーというよりどの世界の主人公が物語最初に登場する主人公なのかがだんだんわからなくなっていってしまうところに、話の複雑さがある。すでに4K UHD Blu-rayで見たにも関わらず、しかも今回は日本語字幕付きなのにも関わらず、話に追いついていくのがやっとという内容に、興奮すら覚えたものである。でも、基本は家族愛がベースになっているので、そこだけ押さえておけばあとは映像と音響の渦に身を任せればいいと思う。

今回、IMAXレーザー4Kで鑑賞したが、元々のフィルムはIMAXカメラで撮影したわけでもなく、IMAX DMRプロセスを経てIMAXレーザー4Kに最適化された映像にリマスターされているので、多分通常劇場との差は画面が大きい、だけになると思う。IMAXだけで見られる映像領域はこの映画には存在しない。しかし、メインアスペクト比が1.85:1とIMAXレーザー4Kのアスペクト比である1.90:1に近いので、スクリーンほぼいっぱいに画面は広がり、映像の迫力は満点である。そこは通常劇場より利点はある。色彩管理もDOLBY VISIONは採用していないので、DOLBY CINEMAとの差は多分ない。むしろ、IMAXの画面の大きさの方が有利かと思う。

音響はDOLBY ATMOSでミックスされているので、そこだけはDOLBY CINEMAの方が有利に思えるが、IMAXレーザー4Kも12chサラウンドをフルに活用しているので、イマーシヴサラウンドの効果は相当に出ている。観客を取り巻く前後左右上下の音の定位感、移動感は他のIMAX映画とは一味も二味も違い、ハッとさせられるシーンが相当数存在する。総じて3次元サラウンド効果が魅力的に発揮されている映画になっていると思う。

アカデミー賞発表まであと2日であるが、個人的には主要部門総なめして欲しい映画であると思う。公開2週目の朝一番の回とはいえ、観客10人程度の入りでは寂しいと思ったので、映画ファンにはもっと見てほしいとは思う。

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