やちむんの「床屋の孫」を聞いての感想

先日、中古ショップの駿河屋から、やちむんの「床屋の孫」という中古CDを確保した、という話を書いている。注文を入れたのが11月4日だった。

それから1週間を経過した11月10日の21時になって、ようやく駿河屋は「床屋の孫」を出荷した。なんでも11月3日-5日のセール期間中に多くの注文が殺到していたため出荷処理が追いつかず、処理に1週間を要したと出荷案内メールには書いてあった。実際駿河屋のサイトにも最大で注文から発送まで8日間を要する場合もある、と書かれているので、僕も気長に待つしかなかった。

駿河屋は静岡に事務所や倉庫があるので、金曜の夜出荷だと月曜に福岡到着かなと思っていたが、ゆうメールで発送したため火曜日である昨日まで待たされた。流石に注文から丸10日かかって品物が届くなんて、日本の物流では考えられないスローさで、焦ったい気持ちが出てきていた。

届いたパッケージを開けて、中古CDを確認する。CDケースは傷があるが、ケースだけは別に買い替えられるから特に問題にはしていなかった。ブックレットが問題で、トレイから取り出したら、ジャケットの紙が一枚あるだけ。歌詞カードが全くないのである。ジャケットの裏面の印刷を見るとスタッフクレジットが書いてあるのだが、そのクレジットの表記が途中で切れているから、おそらくブックレットの表紙だけ残っていて、他の部分は全て破棄された形で駿河屋に売られたのだと思う。がっかりしたが「150円だから仕方ないか」と思うことにした。

肝心のCD本体は再生面に多少の擦り傷はあったが、再生に支障はなかったので、楽曲そのものはじっくり聴くことができた。僕はCDで音楽を聴くのは最初の一回ぐらいで、あとはMacBook ProにCDを取り込んで、iPhoneやApple TVで聴くことになるので、ジャケット写真とCD本体が問題なければ、実際は支障ない。

この「床屋の孫」は、1970年ごろに活躍した日本語ロックの先駆者である「はっぴいえんど」というバンドのメンバーであった鈴木茂さんがプロデュースや演奏に加わった作品である。その影響が如実に楽曲に表れていて、いつものやちむんのアルバム風でいて、はっぴいえんどっぽい雰囲気も漂わせている、アルバムとしての統一感の取れた楽曲構成になっている。

楽器もドラムやベースはなかった。アコースティックギター、バイオリン、エレキギター等のアコースティックな楽器類中心で演奏されていて、カチッとしたフォークを聴かせてくれる。やちむんの他のアルバムでも印象的な山里満寿代さんのバイオリンが楽曲のフォーク度合いを強めている。本来ハーモニカで演奏される楽曲をバイオリンで置き換えました、と感じる部分である。

僕のやちむんの基準は、奈須重樹さんが手作りで焼いている「一生売れない心の準備はできてるか」の公式海賊版CD-Rになってしまっているので、このCD-Rの音源を聴き慣れた身にしてみると、「床屋の孫」のアルバムタイトルナンバーである「床屋の孫」もバイオリンフィーチャーで印象が相当違っていて新鮮である。

「床屋の孫」の入手にこだわった一つに、「一生売れない心の準備はできてるか」の予告編で一瞬流れる(映画本編でも一瞬流れたように記憶している)「ぼくの沖縄四半世紀~熱風道程編~」が印象に残っていて、この楽曲をフルで聴きたいというのが理由の一つである。今回、フルで聴くことができたが、奈須重樹さんの学生時代から20歳代の人生を垣間見ることができて、いい楽曲だな、と感じていた。

そのほかにもタイトルのインパクトが強い「よだきんぼ」とか、山里満寿代さんがラップに挑む「キノボリトカゲの憂鬱」とか、なかなかチャレンジングな楽曲が揃っていて、聞き応えがある。

中古CDで買ったがために歌詞カードがないというアクシデントに見舞われてしまったが、アルバム自体は他のやちむんのアルバムと比較しても出来のいいアルバムだと思う。どこかで歌詞カードがちゃんとある中古CDを見かけたら、2枚目の入手も検討したい。

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